Outline of Annual Research Achievements |
現在,低侵襲かつ効率的な顎骨再生治療が求められる.昨年度,新規3次元多孔質u-HA/PDLLA複合体(以下3D-H/PLA)が,生体活性骨伝導能と機械的強度,形態細工性から,顎骨再生足場としての有用性を証明した.本研究年度は,研究を発展させヒトiPS細胞を用いて,まず胚様体(EB)形成を経て,骨形成細胞への誘導を行い,FACSを用いてアルカリフォスファターゼ陽性細胞のみを骨芽細胞前駆細胞として研究に用いることとした.FACSによりソーティングされたALP陽性細胞の骨形成細胞としてのPhenotype検索は順調であったが,この時点でiPS細胞の維持に研究経費を大きく超越し研究の転換が必要であった.そこでヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を応用し,研究を継続した.研究にはSDラット(オス,9週齢)を用い,下顎骨に直径4mmのdefectを作製した. hMSCは,FACSを用いてLNGFRおよびTHY-1の両者を発現する,増殖能と骨形成能の高い分画を選択的に単離したhMSCを用いた.3D-H/PLAに,hMSC移植なし群,1×104個および1×105個の移植実験群,欠損のみの4群にて比較検討を行った.動物は,術後免疫不全状態(FK506 1mg/Kg/Day, ABPC連日投与)とし,2,4週間にて検体を採取し形態および組織学的に評価した.Micro-CT検索および組織学的検索評価から,2週間および4週間において,hMSC移植なし群では骨形成は遅延していたが,hMSC移植群では3D-H/PLA周囲および内部への有意な骨再生により,3D-H/PLAとの骨形成による癒合が見られた.顎骨再生足場材料としての3D-H/PLAは,骨形成細胞の増殖および分化を活性化する生体活性能を有し,さらにhMSCを移植応用することにより,効率的な顎骨再生療法開発の可能性が示唆され有用な知見が得られた.
|