2015 Fiscal Year Research-status Report
炭質物ラマン摩擦発熱温度計を用いた断層摩擦発熱温度分布の解明
Project/Area Number |
15K21177
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
向吉 秀樹 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (80744200)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 断層 / 摩擦発熱 / 炭質物 / 熱熟成 / 付加体 |
Outline of Annual Research Achievements |
断層活動に伴う摩擦発熱温度の計測は,地震時の絶対応力推定や動的弱化機構を推定する上で重要である.本研究は,断層岩中に含まれる炭質物の熱熟成を指標とした,断層摩擦発熱温度の定量的評価を行うことを目的としている. 本年度に行った研究内容および成果は以下の通りである. 陸上付加体から採取した炭質物の100℃~1300℃までの100℃ごとの加熱実験(昇温速度20℃/min)を行い,実験後の試料のラマン分析を行った.その結果,短時間の被熱でも,被熱温度の上昇とともに炭質物のラマンスペクトルが大きく変化することが明らかとなった. 陸上付加体に露出する2つの化石巨大分岐断層から採取した断層岩の顕微鏡下での微細構造観察を行った.2つの断層のうち,浅部断層岩が露出していると考えられている,房総半島保田付加体から採取した断層岩には,カタクレーサイトおよびウルトラカタクレーサイトが認められた.相対的に深部の断層岩が露出していると考えられている四国南西部四万十帯から採取した断層岩には,断層角礫,カタクレーサイト,ウルトラカタクレーサイト,シュードタキライトが認められた. 顕微鏡観察で確認されたこれらの断層岩に対し,微細構造に対比させた摩擦発熱温度分布を明らかにすることを目的とし,それぞれの断層岩中に含まれる炭質物のラマン分析を行った.分析の結果,微細構造の違いに応じて,炭質物のラマンスペクトルが大きく異なることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,加熱実験を100℃~1000℃の温度領域で行う予定であったが,より高温の発熱温度を検出できるよう,1300℃までの実験を実施した.また,断層岩の微細構造解析およびラマン分析についても次年度に行う予定であったが,実施している.炭質物の粉砕実験および化学分析についても実施済みである.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得られたラマン分析結果に対して,スペクトル解析ソフトを用いた解析を行い,ラマンスペクトルの変化を定量的に評価する. 評価した結果をもとに,天然の断層における摩擦発熱温度を定量的な見積を行う. また,シュードタキライトが認められた四国南西部四万十帯の断層の周囲に,シュードタキライトを産しない断層を数本確認した.今後,これらの断層の断層岩についてもラマン分析を行い,摩擦発熱温度の見積を行う予定である.
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Causes of Carryover |
炭質物の重液分離に使用する試薬の価格が計画時より値上がりしていたため,当初の予定より購入量を減らしたことで差額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
差額分は重液を少しでも多く再利用するための濾紙の購入に充てる予定である.
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