2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K21180
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
浅子 壮美 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (80737289)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | モリブデン / 炭素-水素結合切断 / 不活性結合活性化 / カルベン |
Outline of Annual Research Achievements |
現在までに報告されている炭素-水素結合直接変換反応に用いられる金属触媒は、パラジウム,ロジウム,ルテニウムといった少数の限られた「特権金属」に大きく偏っており、全く新しい革新的な炭素-水素結合直接変換反応の発見が起きにくい状況が生じている。本研究では、炭素-水素結合活性化反応においてこれまで注目されてこなかったモリブデンを触媒として用いる直接変換反応を開発し、既存反応には見られないモリブデン固有の反応性を見出すことを目的としている。本年度は、メチル求核剤を用いるカルボニル化合物の触媒的メチレン化反応を開発した。すなわち、触媒量のモリブデン塩存在下、アルデヒドやケトンに対してメチル金属反応剤を作用させると、対応するメチレン化合物が良好な収率で得られた。重水素標識実験等から、本反応がメチルアニオンのカルボニルへの付加と引き続く脱離反応によりオレフィンを与えるのではなく、メチルモリブデン種からのα水素脱離により生成したモリブデンメチレン錯体がカルボニル化合物に作用してオレフィンを与えることが示唆された。また、様々な前駆体からカルベンを発生させ、引き続く炭素-水素結合への挿入により直接官能基化する反応をいくつか見出した。これとは別に、ケイ素-水素結合の切断を経てアレンへ付加させるヒドロシリル化反応を見出した。本反応は前例の無い位置選択性で進行し直鎖アリルシランを選択的に与えることから、モリブデンの特徴がよく表れている。また、この位置選択性の発現要因をDFT計算により解明し、ケイ素と同族の炭素-水素結合の切断を経る位置選択的な不飽和結合への付加反応を開発するにあたり重要な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メチル求核剤のα水素脱離等で発生させたモリブデンカルベン中間体を利用するモリブデンに特徴的な触媒的炭素-水素結合直接変換反応をいくつか見出した。また、前例の無い位置選択性で進行するアレンのヒドロシリル化反応の開発および機構解明を達成し、炭素-水素結合切断を経る不飽和結合への付加反応の位置選択性制御につながる重要な知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
モリブデン触媒ならではの特徴ある炭素-水素結合変換反応をいくつか見出した。この個性的な反応性に基づいた新規合成反応の集中開発を推し進めていく。
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Causes of Carryover |
当初の計画よりも早い段階で特徴的な反応を見出すことができたため、試薬類の購入額が抑えられた。また、高額なモリブデン錯体や配位子を必要とせず、安価なオキソ、カルボニル錯体と配位子の組み合わせで反応が進行することがわかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額は、見出した反応の特徴をより活かすための反応基質や配位子合成に必要な消耗品および研究成果発表に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)