2017 Fiscal Year Research-status Report
がん患者のピアサポートの援助効果についての検討とピアサポーター養成の試み
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15K21192
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
黄 正国 広島大学, 保健管理センター, 講師 (80735275)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ピア・サポート / がん体験者 / 当事者支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究3年目の本年度では,昨年度の質問紙調査の結果を踏まえて,「当事者による支援」という観点から,「がんピア・サポーターとして必要な知識とスキル」を内容とした研修用の教材を作成した。教材には,「がん体験者に必要な医療福祉制度に関する知識と情報」,「地域の医療資源について情報を得られる方法」,「自分の気持ちとニーズを他者に伝えるコミュニケーションスキル」,「がん体験者の気持ちを聴く姿勢とスキル」,「がん体験の意味形成とサバイバーシップ構築を援助する関わり」,「がんピア・サポーターのセルフケアと成長」,「がんピア・サポーターを支えるためのスーパーヴィジョン」などの内容が含まれている。昨年の調査研究に参加したがんピア・サポーターに対して研修参加の募集を行った。研究の趣旨を理解し参加に同意した24人のうち12人を対象に8時間のピア・サポーター研修を行った(他の12人は統制群として研究期間中は待機した。その後に同じ研修を受けた)。研修は,講義セッション(「医療福祉制度」,「がん体験者のこころと語り」など,計2時間),グループワークセッション(「地域医療資源に関する情報を集めよう」,「がん体験者の困る場面を共有しよう」など,計2時間),スキル・トレニーングセッション(「自分の気持ちとニーズを表現するコミュニケーションスキル」,「傾聴スキル」,「セルフケア」など,計4時間)。研修前後に測定した尺度(がんピア・サポーター共感尺度,感情表出尺度など)の比較から,ピア・サポーターとしての知識,態度,スキルが向上したことが示された。参加者から,「長期的な視点でどのような支援をすればいいのかを学ぶことができた」,「長く活動を続けるために必要なスキルを身に付けることができた」などの感想が得られた。一方で,「研修の時間が短い」,「スーパーヴィジョンを受けたい」などの意見もあり,今後の課題が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の交付申請書の研究目的と研究計画に照らすと,がんピア・サポーター養成プログラムの実験研究を完了することができた。一方で,スーパーヴィジョンの実施と事例集の編集を終えることができなかったため,当初予定したスケジュールよりやや遅れているといえる。これは,実験に参加する当事者の方々の都合と合わせることで,実験研究の実施時期を遅らせたことと,スーパーヴィジョンの実施頻度が予想より少なかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
実験研究では,がんピア・サポーターを養成するための教材を作成し,養成プログラムを実施した。1回目の実施で参加者のピア・サポーターとしての知識,態度,スキルが向上したことが示された。今後は,さらにサンプルを増やして,養成プログラムの妥当性の検討と教材の改定を行っていく予定である。また,事例研究として,希望したがんピア・サポーターを対象に,臨床心理士によるスーパーヴィジョンを行い,継続的で実践的な養成活動を進めていく。スーパーヴィジョンで扱った事例から,相談者が特定されないようにがん体験者共通的なストーリーを抽出して,架空の代表事例を作成する。代表事例に対して,モデルとなる相談支援のあり方を示し,当事者同士の相談事例集を編集していく予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)昨年度までの調査研究と実験研究から,ピア・サポーターによる相談支援は医療専門職による相談支援と本質的に異なり,当事者支援の文脈と独特の関係性に基づいて,支援者側と非支援者側の両方が恩恵を受けることが示唆された。上記の視点に基づいたピア・サポーター養成と教材(研修資料,相談事例集など)の作成が必要であった。次年度は,研究目的をより精緻に達成するために,研究協力者を増やして追加実験を行うと同時に,昨年度の実験研究のデータ処理を進めて,学会で成果発表を行う予定である。 (使用計画)次年度の使用額として,958,874円のうち,物品費として250,000円,旅費として300,000円,人件費として250,000円,そして雑費(郵送費,印刷費用など)として158,874円使用する予定である。
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Research Products
(1 results)