2015 Fiscal Year Research-status Report
HIV-1 Vif の自然及び獲得免疫による多面的圧力からの逃避機序の解明
Project/Area Number |
15K21200
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
泉 泰輔 京都大学, ウイルス研究所, 研究員 (90735052)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | HIV-1 / HLA-B35 / Vif / CTL |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト APOBEC3F は HIV-1 の感染を強力に抑制する抗 HIV-1 宿主因子である。HIV-1 のアクセサリー蛋白質の一つである Vif は APOBEC3F と結合し、これをユビキチン化依存的に分解する事で APOBEC3F の抗 HIV-1 活性から逃避している。HLA-B35 拘束性 CTL は Vif の APOBEC3F 結合領域をエピトープとして認識する事が近年報告された。HLA-B35 保有 HIV-1 感染者のウイルスゲノムを調べたところ、HLA-B35 非保有 HIV-1 感染者に比べて有意に APOBEC3F 結合領域であるグルタミン酸( E76) が リシン (E76K) に変異している事が分かった。E76 をアラニンに変異 (E76A) させると APOBEC3F 結合能が喪失する事が in vtro の実験で報告されていた。そこで、我々は患者検体から分離された E76K 変異体を E76A 変異体と共に作成し、APOBEC3F 分解能を調べた所、E76K 変異体でも E76A 変異体と同様に喪失している事が明らかになった。野生型 Vif の NMR 構造を元に E76K 及び E76A 変異体のホモロジーモデルを構築した所、 APOBEC3F 結合部位事態に大きな構造学的変化は認められなかった事から、このアミノ酸の電荷 (グルタミン酸はマイナスでリシンはプラス電荷を帯びる) が APOBEC3F 結合に重要であることが推測された。 HLA-B35 保有 HIV-1 感染者では、HLA-B35 拘束性 CTL の免疫圧により Vif が逃避変異を導入した事から APOBEC3F を分解できなくなってしまったと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HLA-B35 保有、非保有 HIV-1 感染者内のウイルスゲノム中で HLA-B35 特異的な変異が Vif に確認され、 HLA-B35 特異的 CTL エピトープ及び APOBEC3F 結合領域内のアミノ酸である事は当初の想定通りであった。さらに、その変異がマイナス電荷のグルタミン酸からプラス電荷のリシンへの変異であり、このアミノ酸をアラニンに置換した変異体は既に in vitro で APOBEC3F を分解できない事が報告されていたので、 Vif の APOBEC3F 分解能を規定する重要なアミノ酸である事が容易に推察された。Vif の NMR 構造は既に報告されているので、精度の高い変異体のホモロジーモデル作成が可能であった。一方で、 HLA-B35 保有 HIV-1 感染者は Rapid Progressor である事が報告されている。 APOBEC3F 分解能を失った Vif であるにも関わらず、病態の進行が通常より早い人が多い理由として、 APOBEC3F は抗 HIV-1 宿主因子という側面よりも、その脱アミノ化活性を通してウイルスの進化 (CTL エスケープ変異体及び薬剤耐性株) に寄与しているのかもしれないという疑念が生まれた。
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Strategy for Future Research Activity |
HLA-B35 保有 HIV-1 感染者のウイルスゲノムから同定された HLA-B35 拘束性 CTL エピトープ領域中の特異的変異が HLA-B35 拘束性 CTL の免疫圧により誘導された変異であるのかを調べる必要がある。また、得られた変異体が HLA-B35 拘束性 CTL に対する逃避変異であるかを検証する。 本変異株の in vivo での増殖能をヒトの骨髄を移植し、ヒトの血球細胞を持つヒト化マスウを用いて調べる。一方で、APOBEC3F が抗 HIV-1 活性を示すというよりはウイルスの進化に寄与している可能性を in vtro 及び in vivo 実験を進めると共に、 HLA-B35 保有 HIV-1 感染者では APOBEC3F による変異により薬剤耐性及び CTL 逃避エピトープの出現頻度が高いかどうかをウイルスゲノムの更なる解析から明らかにする。
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