2015 Fiscal Year Research-status Report
弱い相互作用による三重項励起子の制御と有機半導体デバイスへの応用
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15K21220
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
嘉部 量太 九州大学, 最先端有機光エレクトロニクス研究センター, 助教 (00726490)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 長寿命りん光 / 有機EL / 分子間相互作用 / 有機半導体 / 蓄光 / エレクトロルミネッセンス |
Outline of Annual Research Achievements |
リン光は遷移過程でスピン反転を伴うため放射速度が遅く、一般的な有機分子においては三重項からの非放射失活が支配的であるため、極低温など非放射失活が低減された環境でのみリン光が観測される。室温付近でリン光を観測するには重原子によるスピン軌道相互作用を利用するか、発光材料を強固なホスト媒体に閉じ込め、分子運動による非放射失活を抑制する必要がある。しかしながら、既存の強固なホスト媒体は全て絶縁体であり、三重項励起子の活用が重要な有機半導体デバイスには応用できない。そこで本研究では、半導体性・真空蒸着可能な特性を有し、かつゲストの非放射失活を抑制可能なホスト材料として、疎水性ステロイドに半導体性カルバゾールを修飾した新規ホスト材料を合成した。この新規ホスト材料は真空蒸着可能で有り、室温でアモルファス膜を形成するため有機ELのホスト材料として利用できることが確認された。このホスト材料に発光材料を分散させた結果、室温で青色蛍光と緑色長寿命リン光が同時に観測された。この混合膜を発光層とするOLEDを作製した結果、電流励起中は青色蛍光、電流印加後は長寿命の緑色リン光を有する残光OLEDの開発に初めて成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに、有機ホスト材料に飽和炭化水素置換基を入れることでゲストの非放射失活を抑制できることを見い出した。この結果を基に半導体性ホスト材料を設計した結果、有機ELにおいて、蛍光とリン光の二重発光取り出し、および長寿命リン光による残光発光という非常に新しいデバイスを実現することに成功している。このように、当初の予定を達成することが出来ているため、順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、有機半導体ホストにおける非放射失活抑制の基本的な考えは確立されたが、非放射失活抑制効果はまだ不十分である。そこで今年度は、種々の半導体性ホスト媒体についても検討を行い、有機固体薄膜において、非放射失活抑制に最も重要な因子の解明に取り組む予定である。 また、三重項励起子を長時間蓄積することが可能であるため、今後はこの励起子を熱などの外的因子を用いて制御することに取り組む。
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Causes of Carryover |
旅費の一部を招待講演や外部資金によって支払ったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた次年度使用額については、今年度の試薬代金に割り当てる予定である。
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Research Products
(13 results)