2017 Fiscal Year Research-status Report
九州北部地域に広域避難した子育て中の家族への支援施策モデルの開発
Project/Area Number |
15K21227
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
松永 妃都美 佐賀大学, 医学部, 客員研究員 (60612017)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 東京電力福島第一原子力発電所の事故 / 母子避難 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は東日本大震災を契機として、被災地である東日本から非被災地である九州北部地域に避難をした子育て世帯の避難行動に関わる心理とその行動経過の分析から、被災地を離れた子育て世帯に必要な被災者支援を検討することを研究目的とする。2011年3月に発災した東日本大震災には、東京電力福島第一原子力発電所の事故が併発した。そのため、放射能や子どもへの健康影響が懸念される契機となったこの事故影響と原発避難の現状を、避難を継続している子どもの母親の心理や避難行動から分析して看護、医療分野に特化した支援介入を検討して放射線災害への備えを強化するための知見を蓄積することは、事故を起こした我が国の重要な責務であり、放射線災害からの復興の支持と促進、そして予測される複合災害対策への強化が求められている保健医療分野においては喫緊の課題である。本研究では主に、震災当時に乳幼児であった子どもと被災地を自主的に離れた子育て家族約30世帯への面接調査を実施し、震災直後から避難を実行するまでの出来事や心理、行動を社会的背景とともにTEM(複線経路等至性モデル)にて分析した。また大規模な複合災害を契機とした自主的な避難が継続される要因について避難先地域の社会資源および人的資源を抽出し、その相互作用をM-GTA(修正版グランデットセオリーアプローチ)にて分析した。 これらに追加して、本研究では以下の項目を実施した。 1.広域避難者情報支援事業への参画 2.全国の広域避難者支援団体へのヒアリング調査 ⇒長期化、複雑化する避難生活への持続可能なサポート体制の検討 3.乳幼児世帯への面接調査データの応用⇒被災経験者の知見を活かした防災対策の検討
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大規模災害を契機として、被災地を離れた被災者を対象とした支援施策モデルの検討に必要なデータ収集を終了し、分析および成果の公表を積極的に実行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
我が国は大規模な複合災害が発生しやすい地形、社会環境を有している。高い確率での大規模複合災害の発災が懸念されている現状において、災害から人命を守り、そして被災者の生活や健康を支える中長期的な方策を検討することは必然であり、喫緊の課題である。東日本大震災は膨大な尊い人命を奪い、被災者の健康や生活を今なお困難なものとしているが、その一方で被災者の中には自ら生活を再建して日常を取り戻した被災者が非常に多いことも明らかである。本研究では、大規模複合災害を契機として被災地を離れ、被災をしていない地域での生活の再建を試みた被災者への調査を実施した。被災地での被災者実態や支援の検討が盛んに行われている現状下において、被災地を離れた被災者を対象とした実態調査や被災者支援方策について医療、看護の視点から検討した研究は非常に少なく、今後も研究の推進が求められていると確信している。また本研究においては、放射線被ばくや防護に関する正しい知識の普及と一般化、そして放射能や放射性物質に対するリスクコミュニケーションの検討が課題として浮上した。福島第一の事故から露呈した放射線被ばくや健康影響に対する看護・医療の脆弱さは強化、改善すべき最重要課題であり、今後の研究の推進が求められる。
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Causes of Carryover |
研究成果をより正確かつ国際的なものとし英語での論文投稿や国際学会での結果の公表を行うことを目的として、研究計画を1年間延長した
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Research Products
(5 results)