2015 Fiscal Year Research-status Report
機能性グラフェン誘導体の開発と電子デバイスの作製・評価
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15K21228
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
坂口 幸一 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30470040)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 親水性グラファイト / 機能性グラフェン / 溶媒親和性グラフェン / 撥水性グラフェン / 湿式電極作製 |
Outline of Annual Research Achievements |
「原料酸化グラフェンの合成及び新規合成法の開拓」、「機能性グラフェン誘導体の合成」に関する研究を中心に進めてきた。原料酸化グラフェンの新規合成法として、溶媒とグラファイトの混合液に対し、大気圧下で発生させたプラズマによる親水化並びにグラフェンへの剥離を試みたところ、単層剥離には至らなかったが、親水化可能なことを見出した。本条件は一般的なグラファイトに対する酸化過程と比較し、穏やかな条件で、また独自性の高い研究であることが期待されることから、本結果に着目し、親水化過程の最適化に重点を置いて検討を進めた。得られた材料のキャスト膜を成膜し、面間隔を評価したところ、グラファイト構造をほぼ維持したまま親水性を獲得していうことが明らかになった。また、電気特性評価においても、グラファイトに迫る導電率が得られており、塗布型電極としての応用が期待できることが分かった。本プロセスはさらなる検討を進め応用に結び付けられる様に検討を進める価値があるものと確信している。 また、機能性グラフェン誘導体の合成について、フッ化アルキルを末端に有する酸化グラフェンの合成に成功し、高い撥水性を有していることを明らかにした。今後水分バリア膜への応用などを視野に入れた検討を行う。また、本材料を用いることによって、酸化グラフェンをヒドラジン還元した後でも、機能性官能基が残ったままであることを明らかにした。この結果は後還元処理によって移動度を回復しつつ機能性を残すことが可能であることを示唆している。さらに、酸化グラフェンへの官能基付加方法として汎用性の高いエステル反応によるアルキル鎖の導入に成功しており、今後は機能性官能基を付与する段階へと進展させることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度は「原料酸化グラフェンの合成及び新規合成法の開拓」、「機能性グラフェン誘導体の合成」、「薄膜デバイス化技術の最適化指針の導出」に関する研究を計画・実行してきた。原料酸化グラフェンの新規合成法を検討する中で、溶媒と大気圧プラズマを組み合わせた手法から興味深い結果が得られた。本手法は今後の発展が期待されると同時に独自性の高い研究と考え、本年度の研究の中心に据えて研究を行い、電気特性評価においても、グラファイトに迫る導電率が得られており、塗布型電極としての応用が期待できることを明らかにするなど、大きな進展を得ることができた。また、機能性グラフェン誘導体の合成については、フッ化アルキルを末端に有する酸化グラフェンの合成に成功し、高い撥水性を有していることを明らかにした。今後水分バリア膜への応用などを視野に入れた検討を行う。また、本材料を用いることによって、酸化グラフェンをヒドラジン還元した後でも、機能性官能基が残ったままであることを明らかにした。この結果は後還元処理によって移動度を回復しつつ機能性を残すことが可能であることを示唆している。 一方で、薄膜デバイス化技術の最適化指針の導出に関しては、原料酸化グラフェンの新規合成法の検討を中心的に進めた反動もあり、スピンコーターの作製に留まっており、十分な検討が行えていない状況にあるので、遅れを取り戻し開発してきた材料のデバイス化に向けて、検討を行う。 上記の大きな進展と一部の遅れを鑑み、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、本年度に大きな進展が見られた「溶媒と大気圧プラズマを組み合わせた手法の検討」をさらに進める。本手法は広い応用範囲が見込まれ、独自性の高い研究として、社会的なインパクトも高いものと考えられる。今後は溶媒の種類・量といった実験条件の最適化とこれまでに行ってきた検討の組合せにより、更なる進展が見られると考えられる。また、同時に得られた試料の物性を調べ、その素性を明らかにするとともに、反応機構を検討し、学術的裏付けを抑える。さらに、申請者が行うことができない応用への進展を図るため共同研究先を模索する。 「機能性グラフェン誘導体の合成」に関しては、ツールとしての合成法の確立が成功したことを受けて、今後は受・発光官能基、架橋性官能基、ガス反応性官能基のといった機能性官能基の付与に取り組む、合成法は確立しており、本段階はスムーズに進められると考えている。今後の課題として、得られた試料の孤立状態での物性測定を行い、速やかに薄膜成膜条件の最適化指針を打ち出すことが課題となる。既にスピンコーターを作製済みであり、今後は成膜条件の検討へと速やかに移ることが可能である。 上記に記した本年度の成果を受け、機能性グラフェン誘導体のデバイス化と特性評価を行う。グラフェン誘導体薄膜を成膜し、電界効果型トランジスタ(FET)構造の素子として、デバイス化することを基本とする。計画通りに進まない場合には、原料もしくはグラフェン誘導体の合成に立ち返り、検討を進める。本年度において、原料やグラフェン誘導体の合成の知見を蓄積しており、計画の微修正を行う準備はできているものと考えられる。
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Causes of Carryover |
2015年度は、原料酸化グラフェンの合成及び新規合成法の開拓に関して、興味深くかつ大きな進展が見られたため、本研究課題で見出した新規材料に関する検討を中心に進めてきた。そのため汚染を防ぐための消耗品などへの支出が大きくなり、当初購入予定であった備品の購入を断念したため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度も応用範囲の広く、独自性の高い研究である新規材料への検討を引き続き進めることを計画しており、消耗品への支出は不可避である。また、2016年度は酸化グラフェンへ付加する機能性官能基試薬への支出も見込まれるため、試薬・ガラス器具への支出を中心に無駄なく使用する計画を立てている。
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