2015 Fiscal Year Research-status Report
免疫チェックポイントPD-1/PD-L1の阻害剤スクリーニング
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15K21235
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
松下 洋輔 徳島大学, 疾患プロテオゲノム研究センター, 助教 (70634450)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腫瘍免疫 / 免疫チェックポイント阻害剤 / 化合物スクリーニング / PD-1/PD-L1 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん抗原に対する免疫応答の主役であるT細胞の活性化や抗原応答性は副刺激シグナル、すなわち刺激性及び抑制性シグナルのバランスにより決定される。抑制性共シグナル分子は免疫応答の恒常性を監視する機構でもあることから免疫チェックポイント分子と言われるが、がん細胞はこのチェックポイント分子を巧みに利用し、生体内の免疫から逃れている。この免疫チェックポイントを標的として開発されたものを免疫チェックポイント阻害剤であり、がん細胞の免疫からの逃避機構を遮断することで、免疫系のがん排除作用を復活させるものである。近年抗PD-1抗体が上市され、悪性黒色腫をはじめとして様々ながんで注目を集めているものの、抗体医薬使用による医療費の高騰が問題視され始め、同等の作用を持ち、より安価な低分子化合物開発を試みることは医療経済の観点からも非常に重要である。 本研究ではこの低分子による免疫チェックポイント阻害剤の探索を目的とし、GP-GPU型PCによるin silicoスクリーニングを実施し、PD-1/PD-L1結合を阻害する有用化合物お絞り込みを実施した。一方、アッセイ系確立のため、キラー活性を持つヒトT細胞を増殖・活性化させるとともに、PD-1を高発現している同一ロットの細胞を大量に作製することに成功した。さらに、PD-L1を高発現させた細胞株を樹立し、上記T細胞による傷害活性を脱顆粒のマーカーであるCD107aの発現を指標にフローサイトメーターで確認したところ、PD-L1低発現細胞株との共培養ではCD107aの発現を認めるが、PD-L1高発現株ではその発現が低下することを示した。ここにPD-L1抗体を添加するとCD107aの発現が回復することから、このCD107aを指標としたアッセイ系がPD-1/PD-L1の阻害を効率的に検出できていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
in silicoスクリーニングではGP-GPU型のPCによる分子動力学シミュレーションやドッキングを行い、一次スクリーニングで用いるアッセイ系の構築では、実際にがん細胞による免疫細胞監視機構からの回避抑制による細胞傷害性を指標に系を確立している点で非常に特徴的であるものの、系の確立に時間がかかっており、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
スクリーニングの系確立には成功したため、まずは1次スクリーニングを実施し、有用な化合物の探索を行う。CD107aの発現を亢進させる化合物を見いだせたら、再現性を確認した後、2次スクリーニングへと展開する予定である。一方、1次スクリーニングで有望な化合物を見出せなかった場合は、アッセイ系の再構築や既存のELISA等を用いることも考慮し、化合物についても生理活性物質ライブラリーなどの購入も視野に入れ、創薬に繋がる可能性のある物質の探索を試みる。
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Causes of Carryover |
実際のスクリーニングを実施できなかったことから、次年度使用額が生じた。 研究打ち合わせは実施したが、先方による旅費支払いであったため、使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実際のスクリーニングに使用する分子生物学試薬や消耗品などの購入に充てる。1次スクリーニングで有望な化合物が見いだせなかった場合は、アッセイ系の再構築や既存生理活性物質ライブラリーの購入などにも使用する予定である。
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