2015 Fiscal Year Research-status Report
オニオン構造型フォトニック結晶の作製と紙代替材料への応用
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15K21241
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
金 善南 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (00612532)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ブロック共重合 / フォトニック結晶 / 構造色 |
Outline of Annual Research Achievements |
モルフォチョウや孔雀の鮮やかな色は、色素に基づくものではなく、周期性のある微細構造に由来した構造色である。外部刺激により構造を制御すると色が制御できる。構造色を人工的に再現し、種々の機能材料に用いる研究が多くなされているが、その作製方法が複雑である、色の角度依存性があるなど、多くの解決すべき課題が残されている。そこで、本研究では、ブロック共重合体(BCP)から成るオニオン構造を作製し、自己組織的に周期構造体を発現させることで、単に塗布するだけで角度依存性のない構造色材料を作製すること、構造色に光応答性を付与して、紙代替材料としての性能を評価することを目的とした。 BCP の自己組織化による周期構造体形成は興味深い現象であり、周期構造の形成や変化に関する研究が数多くされている。本研究では、可視光を回折するような周期長を有する周期構造体を設計し、巨大周期長を持つ BCP の合成や構造色発現に注力する。特に、球状の BCP 周期構造体からなる構造色の発現に関しては今まで報告がない。従って、自発型 フォトニック結晶の作製、反射光の変調、反射光の角度依存性を改善した表示素子への応用を目指すことに意義がある。 疎水性部位としてポリスチレン(PS)、親水性部位としてポリイソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)及びポリアクリル酸(PAA)を有するBCPを合成し、それぞれ部位の分子量、重合比に依存するミクロン相分離構造を観察した。重合法としては、安価で簡便な重金属触媒を用いない逆ヨウ 素移動リビングラジカル重合を用いた。重合体は貧溶媒中で粒子かすることを確認した。しかし、高分子量のBCP共重合体を形成することはできなかった。分子量が大きくなることにつれて、粘度は高くなり、反応性は低減した。従って、新しい重合法として、アジド部位とアルキン末端を有する直鎖型高分子のクリック反応を検討しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
可視領域の構造色を得るためには、50nm以上の周期長が必要である。周期長(層間隔、d) は約 λ/4n(λ=反射波長、n=屈折率)の関係である。概報によれば分子量 20-100 kg/mol により 20-50 nm 程度 の周期長を有する周期構造体を得ることができる [A.C. Edrington et al. Adv. Mater. 2001, 13, 421]。しかし、100 kg/mol 以上の BCP を合成するのは容易ではないため、きちんとした分子量の制御の上、周期長を拡張させる工夫が必要となる。しかし、用いた逆ヨウ素重合法ではBCP の共重合比や分子量が容易に制御できなかったため、重合法の再検討が必要となり、研究がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、可視光を回折するような周期長を有する周期構造体を設計し、巨大周期長を持つ BCP の合成や構造色発現に注力する。BCPの重合法として、代表的なリビングラジカル重合法であるATRPやRAFT法を用い、分子量・分子量分布を制御した高分子を合成する。この際、末端にアルキン基やアジド基を導入し、クリック反応を利用することにより、高分子量の共重合体の合成における反応性を高める。また、溶媒環境による相分離構造を制御し、オニオン型周期構造を形成する。分子量と周期長の関係を明らかにする。アゾベンゼン基を導入し、構造色の光応答性について検討する。 BCPの自己組織化する周期構造体は、自発型素子として意義があり、またオニオン構造の形成より表示素子として角度依存性が改善できると期待される。
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Causes of Carryover |
平成27年度に、高分子量の共重合を合成し、相分離構造解析及び、周期長の制御を行うとともにシンポジウムにおいて発表する予定であったが、高分子量の共重合体の合成が困難ンであったため重合法について再検討する必要があった。従って、構造解析が間に合わず、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、構造解析及び機能性検討とシンポジウムでの発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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