2015 Fiscal Year Research-status Report
18後半から19世紀前半にかけてのナポリの民間劇場の担い手に関する実証研究
Project/Area Number |
15K21243
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山田 高誌 熊本大学, 教育学部, 准教授 (10580665)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | オペラ / 劇場 / ナポリ / 大英図書館 / ハミルトン / 筆写譜 / 日記 / 18世紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は2015年12月中旬より2016年1月初旬にかけて、大英博物館にてナポリ大使ハミルトン卿日記史料(Egerton MS 2634, 2635, 2636, 2637, 2638, 2639, 2640, 2641)の調査と複写を行い、記述内容の検討を進めた。仮説では、ナポリ王国のイギリス海軍導入に関して大使に様々な打診が寄せられ、なかでも「オペラ」を通してナポリ王国の意向が示されたことについて、ハミルトン卿は本国イギリスに報告していたものと考えていたが、当該年代の史料(Egerton MS 2638, 2639)に、当該月の史料がなく、またその年代前後の史料群においても劇作品に関して個人的な感想等を記載していないことを確認し、つまり、本研究の当初の仮説の検証は、さらに別角度から行わなくてはならないことを確認することができた。 ただし、上記調査時には同時に、本研究テーマにも密接に結び付くナポリで上演されたオペラの筆写譜群の複写を進めたほか、イタリア音楽研究者チャールズ・バーニーのイタリアオペラ調査史料の調査を行うこともでき、これらをもとに在日オーケストラとそれら作品の復活上演の準備を進めるきっかけを得ている。またあわせて、研究テーマと同時期の楽器の現代レプリカ製作者を訪問し(オランダのバロックファゴット製作家デ・コーニング氏)、当時の楽器の状況や特徴についての知見を深めることができ、以上全体の研究活動を通して、18世紀のナポリのオペラについて総合的な観点からの調査を進めているということができる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大英博物館調査による当該大使(ハミルトン)史料調査を行った結果、ナポリ王室の活動について一部記載があるものの、その主眼はナポリ王国におけるスペイン、フランス等他国の諜報活動にあり、ナポリ王国内でのオペラ等の個人的感想などは確認できず、当初の仮説を裏付けるには至らなかった点で遅れているといえるかもしれない。ただし、代表者はナポリ銀行歴史文書館、ならびに公証人文書館において既にハミルトン卿関連の支出、契約項目を確認しており、次年度以降にこれら史料調査をすすめることで、当該調査を続行する。
|
Strategy for Future Research Activity |
代表者はすでにナポリ銀行歴史文書館、ならびに公証人文書館でハミルトン関連の支出、契約項目を確認しており、次年度以降に別の角度から調査を続行する。なお、28年度は熊本震災による被災(代表者自宅)のため、調査予定の半年~1年程度の順送りを検討している。
|