2017 Fiscal Year Research-status Report
奄美群島の小中学校校庭に生育する野生植物の自然教育的効果の解明と教材化
Project/Area Number |
15K21248
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
川西 基博 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (50551082)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 環境教育 / 身近な自然 / 植物 / 校庭 / 奄美 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、亜熱帯島嶼地域における「身近な自然の観察」に注目している。世界遺産候補地である奄美群島を対象とし、その小中学校校庭に自生する植物の種組成と種多様性を明らかにし、環境教育的効果を検討することを目的とする。 29年度は新たに与論島の小学校3校と沖永良部島の小学校7校において、校庭の植物相を把握するための調査を行い、園芸植物を含むすべての維管束植物のリストを作成した。各学校において約120種程度の維管束植物が確認され、絶滅危惧種のイヌノフグリの生育も確認された。これらの植物のリストには和名の他に学名、科名等の系統を示す区分と、生態的な特性を示す在来、外来、栽培の区分、および絶滅危惧種についての情報を加えて、教材としての活用をはかった。なお、与論島の茶花小学校では小学校教員ととともに調査を行い、理科や学校での活用について意見交換をした。 また、国立公園に指定され、世界自然遺産への登録を控えている奄美大島においては新たに2校の調査を行うとともに、奄美大島に自生する植物の生態的特性を理解するために学校周辺の自然環境のなかでみられる植物の調査も行った。特に、中学校の理科につながるシダ植物に注目し、分布パターンと生活型の組成を明らかにした。なお、与論島と同緯度に位置する沖縄県の伊平屋島においても校庭の植物調査を行い、比較するためのデータを得た。 薩摩半島においては川内市内の小学校で校庭の植物調査を行い、校庭の植物相を明らかにするとともに校庭内の様々な植物群落と環境との関係を明らかにするための研究を始めた。これらの調査を実施すると同時に、小学校教員と児童に対して観察会を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画で予定した通り、29年度は奄美では主に沖永良部島と与論島で調査を行った。当初計画で設定した3つの調査項目の進捗状況は以下のとおりである。 1)小中学校校庭の植物相の解明に関する調査については、当初計画の通り、沖永良部島と与論島での学校において調査を行った。鹿児島県本土では大隅半島での調査は断念し、薩摩半島川内地域において詳細な調査を行った。対象校で確認されたすべての植物リストを作成し、生態的特性をまとめた。校庭を構成する植物群落の解明を目的とした植物社会学的植生調査は、川内地域の対象校に絞って詳細な調査を実施した。 2)生活型による出現種の類型化については、計画の通り生活型類型の判定に用いる標本の作製、関連する文献の収集ともに順調に行うことができた。立地環境との関係性の解析については、校庭の環境調査を開始した。また、奄美大島においては学校周辺環境での植物の生育状況を明らかにするための調査を実施した。 3)校庭の植物の自然教育的有効性の検討については、当初計画にあったアンケート調査は行えなかったが、校庭調査を行った学校の教員とともに調査を実施し、意見交換を行った。また、薩摩川内の小学校では児童と理科教員に対する植物観察会を実施した。
|
Strategy for Future Research Activity |
30年度はこれまで調査を行ってきた地域の植物リストを統合し地域間の比較を行うとともに、特に環境と生活型の関連性を明らかにする。その結果をもとに図鑑と観察マニュアルを作成し、校庭の植物観察会を実施する。 1)奄美群島と鹿児島本土の小中学校校庭の植物相の解明を進めるために、植物群落と植物相のそれぞれのデータをまとめ、地域間の比較を行う。データが不足している地域において追加の調査を行う。 2)立地環境との関係性の解析については、植物標本と文献から、生活型の判定を行う。 現地での光環境、土壌環境に関する調査をすすめ、不足データを補完する。引き続き植物標本と文献から生活型の判定を進め、環境と生活型の関連性を明らかにする。 3)以上の結果をもとに、観察のしやすさ、環境の指標性、生活様式の特異性、保全上重要性などの観点から、各植物の教育的有効性と教材化の可能性を検討する。アンケートを実施し、小学校での活用について検討する。これらを総合して、奄美群島の各島における自然教育で取り上げるべき植物群を選定し、リストを作成するとともに生態の情報を盛り込んだ図鑑と観察マニュアルを作成する。これらの成果を用いて各学校の教員を対象に観察会を行う。
|