2016 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の口腔の健康格差と社会環境要因に関する日英国際比較研究
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15K21266
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
伊藤 奏 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 助教 (10736474)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 口腔の健康格差 / 国際比較 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高齢者の口腔の健康と社会経済状態について日本と英国のデータを比較し、口腔の健康を増進させる社会づくりの基盤となる知見を明らかにすることを目的としている。 口腔の健康格差はライフコースを通じて存在し、幼少期にプラークやう蝕が多い集団は、大人になってからも同様に多いことが報告されている。また、幼少期の社会経済状態の口腔の健康への影響はその後の人生まで及ぶ可能性が報告されているため、平成28年度の研究では、アウトカムの指標を無歯顎(客観的指標)だけでなく、主観的口腔健康観(主観的指標)を加え、JAGES(日本老年学的評価研究)およびELSA(English Longitudinal Study of Aging)の2010年データを用いて、学歴を若い時期の社会経済状態、所得を現在の社会経済状態として、ライフコースにおよぶ社会経済状態と無歯顎および主観的口腔健康観の格差へとの関連を調べた。 日本と英国はどちらも国による保険制度が存在する。人口1000人あたりの歯科医師数は日本:0.79名、英国:0.54名であり(OECD Health Data 2014)、医療サービス関連の家計支出のうち、歯科医療に関する支出の割合は、日本:10.6%(平成25年度家計調査)、英国:12.0%(Consumer trends, UK Statistical bulletins 2013)であった。日本に比べ、英国の方が無歯顎の確率は高いが、主観的口腔健康観については、相対的に日本の方が悪く、「口腔の健康が良くない」と感じているものが多い傾向がみられた。学歴および所得格差について、日本と英国どちらも、無歯顎と主観的口腔健康観ともに、学歴や所得が低いほど有意に無歯顎および低い主観的口腔健康観である傾向がみられた。 口腔の健康はライフコースにおよぶ社会経済状態に影響を受ける可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定になかった新たな解析の実施や、英国サイドとの連絡に時間を有するため、縦断データの検証に至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
口腔の健康格差について、相対的な比較に加え、絶対的な比較を実施する。具体的には、Slope Index of InequalityおよびRelative Index of Inequalityを算出し、日英の比較を行う。また、当初の予定に伴い、縦断データを用いてマルチレベル分析を行い、学会発表及び論文化へと進める予定である。
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Causes of Carryover |
論文投稿に至らなかったため、投稿費用について繰り越しとなった。また、データ提供元であるJAGESやELSAとのさらなる研究打ち合わせが必要であるため、そのための経費として次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文投稿費用、情報収集のための学会参加および研究打ち合わせの経費として使用予定である。
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