2015 Fiscal Year Research-status Report
肺高血圧症における新規ドーパ受容体GPR143の機能解析
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15K21271
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
古賀 資和 横浜市立大学, 医学部, 助教 (00637233)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | L-DOPA / GPR143 / 肺高血圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
原因不明の進行性疾患である肺高血圧症における神経伝達物質候補分子L-DOPAとその受容体候補分子であるGPR143の関与について実験動物を用いた検討を行った。 SDラットに対するモノクロタリン投与肺高血圧モデルの作成は予定通り成功し、摘出臓器に対する生化学的な検討も行われた。その結果、肺において、GPR143遺伝子は初期の一過性の増加と、続発する発現量の低下が、定量的PCR法により確認された。しかし、ウエスタンブロッティングによるタンパク発現量の解析において有意な変動を認めることはなかった。 また、マウスにおける肺高血圧モデルの作成は、モノクロタリンによるものでは安定した病変や表現型を得ることができなかった。そのため、SHRラットやGPR143遺伝子欠損マウスによる検証を行うことができていない。 さらに、観血的血圧測定によるL-DOPAの右心、肺血管への作用についても投与経路が安定しなかったため十分な検討は出来なかった。しかし、肺血管を摘出し張力を測定する検証では、L-DOPAが存在するとき、フェニレフリンによる血管収縮を修飾している可能性が見出された。そしてこの現象は、モノクロタリン投与モデルにおいて障害されることも分かった。興味深いことに、当てコールアミンと同様に肺血管収縮に一定の寄与があると報告されているセロトニンでは、L-DOPA処理はセロトニン誘発血管収縮を修飾することはないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
GPR143のタンパクレベルをウエスタンブロットで解析する際に高分子の重合体が高頻度で認められ、正確な定量ができない状況が一時認められたため、生化学的な検証が中断してしまった。また、観血的血圧測定の技術修得は問題なかったが、L-DOPAの作用を特異的に評価できるような阻害剤の組み合わせを検証することが難しかったため、摘出血管にシフトしたことも実験の進捗に影響している。加えて、マウスによる肺高血圧モデルの作成が想定より難しかったことにより、GPR143遺伝子欠損マウスによる実験に着手できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスにおけるフェニレフリン誘発性血管収縮や、血圧上昇がL-DOPAにより修飾されることが肺血管においても認められることが証明されつつあるため、この現象について確証を得るための実験を進めるとともに、モノクロタリン投与肺高血圧モデルにおいて、その感受性が低下する可能性を説明する機序の解明を行うとともに、マウスにおける安定した肺高血圧モデルの作成と、GPR143遺伝子欠損マウスを用いた検証を行うことで、L-DOP/GPR143シグナルの肺高血圧における役割を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
平成27年度中に着手を考えていたマウスにおけるモデル動物の作成に着手したものの、検証に用いるための安定したモデル動物作成ができなかったため。また、当初購入する予定であった観血的血圧測定装置の一部を研究協力者より借りることができたため、本体価格相当分に隔たりが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画に基づきマウスにおけるモデル作成に使用したり、また手技的な困難により進捗が滞る可能性のあるマウスをもちいた観血的血圧測定を行うためにカテーテル調達費用などにあて、進捗状況の改善を試みる予定である。
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