2015 Fiscal Year Research-status Report
下位脳幹弧束核におけるドーパ-グルタミン酸神経伝達間相互作用の機能解析
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15K21273
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
増川 太輝 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助手 (10711898)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | L-DOPA / OA1 / Glutamate / NMDA / 延髄弧束核 / 心血管応答中枢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、麻酔下ラットの延髄弧束核領域(NTS)において、単独では無作用量のドーパがグルタミン酸による降圧および徐脈応答を増強させる知見を基に、ドーパとグルタミン酸の神経伝達間相互作用を明らかにすることを目的としている。平成27年度は以下の成果を得た。 (1)麻酔下ラットのNTSにグルタミン酸またはドーパを微量注入し、降圧および徐脈応答に関する用量反応相関曲線を求めた。単独では無作用量のドーパ存在下におけるグルタミン酸応答を検討したところ、同用量のドーパはグルタミン酸応答を増強させた。この増強効果はドーパ拮抗薬であるドーパシクロヘキシルエステルで拮抗された。一方で、無作用量のグルタミン酸はドーパ応答に影響を与えなかった。 (2)ドーパがどのようなグルタミン酸受容体応答を増強させるかを(1)と同様に、降圧および徐脈応答に関して検討したところ、ドーパはNMDA受容体作動薬のNMDAに関する応答を増強させた。一方で、AMPA受容体作動薬のAMPA、代謝性グルタミン酸受容体作動薬のdihydroxyphenylglycineに関する応答には影響を与えなかった。また、NMDA受容体のうち、NR2Bの拮抗薬イフェンプロジルの存在下ではDOPAによるNMDA性の血圧下降応答の増強は認められなかった。このようなNMDA受容体応答の増強がOA1を介しているか否かについてOA1遺伝子欠損マウスを用いて検討したところ、OA1遺伝子欠損マウスでは、DOPAによるグルタミン酸およびNMDA応答の増強は抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)心血管調節中枢である延髄弧束核領域においてグルタミン酸とドーパが神経伝達間相互作用を示すことが見つかったことは大きな成果である。27年度の計画通り、ドーパとグルタミン酸の心血管応答に関する用量反応曲線を示し、ドーパによるグルタミン酸応答の増強が確認できた。また、その効果が拮抗薬で阻害されることを確認した。 (2)ドーパによって修飾されるグルタミン酸受容体がNMDA受容体であることを同定した。また、NR2Bサブタイプを介する応答がドーパによって機能修飾を受けることを見出した。29年度に行う予定であったOA1遺伝子欠損マウスにおける検討も行うことができた。 したがって、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
実施計画の通り、ドーパと機能連関が認められるサブタイプを中心に、NTSにおけるOA1とグルタミン酸受容体およびグルタミン酸神経マーカーがどのような局在関係を示すか免疫染色により検討する。 グルタミン酸受容体とOA1を動物細胞に共発現させ、免疫沈降法やFRETを用いて物理的相互作用の有無を確認する。 イメージングや電気生理学的手法を用いて、ドーパがグルタミン酸応答を増強させるか否かを検討する。
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