2015 Fiscal Year Research-status Report
薬物代謝酵素発現酵母を用いた指定薬物代謝物合成法の確立
Project/Area Number |
15K21275
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
西川 美宇 富山県立大学, 工学部, 研究員 (90749805)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 薬物代謝酵素 / 酵母発現系 / 代謝物生合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、指定薬物の使用鑑定に必要である様々な指定薬物由来の代謝物標準品を提供するために、効率的な指定薬物代謝物生合成システムを構築することを目的とする。当該年度は、幅広い指定薬物の代謝物生合成に対応するために、薬物代謝酵素であるモノアミンオキシダーゼ(MAO)およびフラビン含有モノオキシゲナーゼ (FMO)発現系を構築した。研究担当者らは既に代表的な薬物代謝酵素であるシトクロムP450 (CYP) 、UDP-グルクロン酸転移酵素 (UGT)、および硫酸転移酵素 (SULT) 等の酵母発現系を有している。しかし指定薬物の代謝にはMAOやFMO等が重要な役割を果たす場合がある。 MAOは内因性神経伝達物質の代謝に関わる酵素であり、基質特異性の違いからMAO-AおよびMAO-Bの2分子種が存在する。発現宿主として出芽酵母であるSaccharomyces cerevisiae (S. cerevisiae) を用いて、MAO-AおよびMAO-B発現系の構築に成功した。また、麻薬や覚せい剤等のN位水酸化に重要な酵素であるFMOはFMO1~5の分子種が存在するが、重要な薬物代謝器官である肝臓での発現が報告されているFMO3、FMO4およびFMO5の発現系を構築した。次に新規に構築した発現系の機能性評価を行った。MAOにより代謝されるモデル基質化合物は代謝物標準品の入手が困難であるため、目的代謝物の生成確認による活性評価には至っていない。そこで、現在はMAO代謝反応で生じるH2O2の測定による代謝活性評価を試みている。FMOについては、モデル化合物である4-(methylthio)tolueneに対する代謝活性を確認した。平成28年度はこれらの新規構築発現系と既存の薬物代謝酵素発現系を用いて、種々の指定薬物を基質とした代謝物調製を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実施計画書通り、2種類のMAOおよび3種類のFMO発現系の構築を行った。MAOの代謝活性測定に際しては代謝物標準品の入手が困難であったため、代謝物生成による代謝活性確認には至っておらず、現在代替法による活性評価を試みている。FMO発現系に関してはモデル基質化合物を使用した活性評価が完了し、予定通りの進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度に新規に構築したMAOおよびFMO発現系と、既存の薬物代謝酵素発現系(CYP,UGT,SULTなど)を用いて、種々の指定薬物代謝物の調製を試みる。代謝物生合成の確認に際し、指定薬物の代謝物標準品は概して入手困難であることが予想される。代謝物が入手不可能な場合は、各代謝酵素阻害剤添加時の活性阻害により代謝活性を評価する。また、ヒト肝由来酵素画分や市販発現系を用いた代謝プロファイルの比較を並行して行う。
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Causes of Carryover |
旅費における支出が当初予定を下回ったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に物品費として、基質化合物である指定薬物の購入等に使用する。
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