2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K21277
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
森 英樹 福井県立大学, 学術教養センター, 准教授 (20534671)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 視覚動詞 / 意味拡張 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究計画は、オーストラリア国立大学での在外研究期間を活用して、視覚動詞と条件命令文に関わるデータを日本語、英語、韓国語、中国語から収集・整理した上で、各言語における用法の類似点と相違点、意味拡張の特徴を明らかにすることであった。まず、オーストラリア国立大学の豊富な蔵書及び論文データベースを基に、視覚動詞に関する基本文献の読み直しから始め、問題の所在を確認した後、先行研究に取り上げられてこなかったデータを含め、各言語の母語話者へのインフォーマントチェック等を通して本研究に必要なデータを収集した。この作業は、新データの発掘とともに、視覚動詞に関する対照研究を可能にするという点で本研究や関連研究において重要なプロセスだったと考えられる。そして、日本語の「Vてみる」構文をアスペクト的特性、モダリティ的特性、主観的特性の3つの観点から詳細に分類し、収集した韓国語と中国語のデータとの比較対照を試みることによって、類似構文に見られる3言語の類似点と相違点を体系的に記述した。この種の体系的な比較対照研究が十分なされてこなかったという意味で本研究の理論的、類型論的意義が見出される。また、上記の分類で明らかになった「Vてみる」の3つの特徴が、英語圏(オーストラリア)での日本語教育の文脈でどのように教えられているかについての実態調査も実施した。具体的には、各種教科書の「Vてみる」構文を説明した記述内容を検討しながら、オーストラリアの大学及び高等学校の授業担当者への聞き取り調査等を行うことによって、日本語と英語の視覚動詞の用法が完全に一致しないことを裏付けた。これによって、本研究から得られる知見が関連領域へも応用可能であり、理論的に貢献できる可能性と方向性を探った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視覚動詞に関する各言語の視覚動詞のデータを収集して本研究のために整理・分析できたこと、分析のための理論的な枠組みを構築したこと、必要な文献購入や実態調査ができたという点で、平成27年度の目標はほぼ達成したと思われる。ただ、一連の考察は草稿という形でまとめたものの、学術雑誌等への論文投稿が遅れていることと予定していた学会発表の応募に間に合わなかったことから、研究成果の年度内の公表は実現できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は前年度の研究成果の公表を優先事項とし、学術雑誌等への論文投稿および学会発表への応募を計画的に行う。また、視覚動詞を伴う日本語の条件命令文と視覚動詞が生起しない英語の条件命令文との構文的・意味的対照研究が平成28年度の研究計画であるため、前年度の視覚動詞の知見を踏まえながら、関連データの整理・分析と文献の充実を図る。具体的な方法としては、日本語の「Vてみる」が持つ現実性(モダリティ的意味)に注目して、それを英語の結果性(アスペクト的意味)と対照させたスケール的な理論的枠組みによって、日英語の対照分析を行い、日英語の条件命令文の特性を明らかにしたい。
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