2016 Fiscal Year Research-status Report
中国北京市「城中村」における居住環境の形成・変容とその持続的整備手法に関する研究
Project/Area Number |
15K21284
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
川井 操 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教 (10721962)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 城中村 / 北京 / 大雑院 / 再開発 / 四合院 / 歴史的保存地区 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、北京旧外城宣西北地区における城中村化と大雑院化、それに伴う再開発の実態を明らかにした。宣西北地区では、清代・中華民国期の文人故居や会館が数多く現存する。1970年以降に伝統民居の四合院内で複数世帯が雑居する「大雑院化」が今日まで続いてきた。一方で政府やディベロッパー主導による地区全体の再開発をめぐる保証金と住民移転の問題が顕在化している。 本研究は北京における雑居増築した状態「大雑院」化の形成過程を文献資料と現地調査を基にして、人口流入、住宅政策、自然災害から解明した。さらに北京で今まさに起こっている再開発の実態について、現地ディベロッパーから移転や補償に関する資料を入手し、加えて住民へのヒアリング調査により解明した。そして大雑院の各住戸とその住民データを2度にわたる緻密な現地調査から得ている。具体的には再開発対象となった四合院5件に居残る13住戸の実測調査、その住民のプロファイル、増築プロセス、再開発実態に関する詳細なヒアリング調査である。 巨大な資本と複雑な政治的背景を持つ首都北京において「重層的な歴史保護」「スラムに対する都市整備」「都市開発による大きな利益」という一見矛盾した構造を暴き出すことによって、都市中心域が「スラム化」から「廃墟化」へと新たなフェーズに移行したことを解明した。さらにインフラの整備、大雑院の保全修復方法、住民の移住と定住のあり方から持続的な都市整備手法を提言した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度では、北京旧内城新体倉歴史文化保護区において、城中村化と大雑院化を明らかにするために臨地調査と文献収集をおこなった。臨地調査では、施設分布、宅地割、電子メーターの数の調査をおこなった。加えて4件の四合院住宅の実測調査、居住者に関するヒアリング調査を実施した。上記の成果は、日本建築学会大会発表会(九州)で発表した。 平成28年度では、北京旧外城宣西北地区において、城中村化と大雑院化、さらに再開発の実態を明らかにするために臨地調査と文献収集をおこなった。臨地調査の内容は、再開発対象となった四合院5件に居残る13住戸の実測調査、その住民のプロファイル、増築プロセス、再開発実態に関する詳細なヒアリング調査である。これらの研究成果は、途中経過報告として2016年9月に国際論文シンポジウム ISAIA 11thにて発表された。 以上のように、当初予定した研究対象地の調査を問題なく遂行している。加えて研究成果の発表も学会や国際シンポジウム等で頻繁におこなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は研究最終年として、当初予定した研究対象地の調査をおこなう。すでに昨年度予備調査をおこなっており、5件の実測調査、ヒアリング調査、施設分布調査を実施した。 以上のデータ整理をおこなった上で、さらに現地にて対象家屋の実測調査、ヒアリング調査、文献収集を進めていく。
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