2016 Fiscal Year Research-status Report
偏光観測を用いた生命探査法の開発: 海の検出と大気の特徴づけ
Project/Area Number |
15K21296
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
高橋 隼 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 研究員 (80648957)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 太陽系外惑星 / 偏光観測 / 地球照 / 月食 / 検出可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、(A)海を持つ惑星の探査法開発、(B)大気の光学的厚みの調査法開発、(C)「大気透過光の偏光」を利用した惑星特徴づけ手法の開発で構成される。また、(A)、(B)、(C) に共通する研究項目として、「30m級望遠鏡での応用可能性の検討」を実施する。平成28年度は、(共通項目)および(C)に注力して研究を行った。また、(A)、(B)についても並行して研究を進めた。 (共通項目)について、前年度に引き続き、次世代超大型望遠鏡(口径30-40 m)および系外惑星直接観測装置の利用を想定し、偏光分光観測による系外惑星水蒸気検出の実現可能性を見積もった。前年度の時点では未検討であった観測誤差要因も検討に加え、既知の惑星のうち5-14個の惑星について有意義な探査が可能であるという結論を得た。本研究の結果をまとめた論文が、Astronomy & Astrophysics 誌 (599, A56, 2017) に掲載された。なお、この研究項目で開発した観測実現可能性の評価手法は、水蒸気探査以外を目的とする偏光観測にも応用可能なものである。 (C)について、平成27年4月4日にすばる望遠鏡を用いて取得した皆既月食の偏光分光観測データを解析した。月食中の月は、波長 600 nm 以下および酸素分子吸収波長 760 nm 付近で 2-3 %程度偏光していたことを発見した。簡単なモデルを用いた議論により、観測された偏光は、地球大気透過中の非等方的な2回散乱によって生じた可能性が高いことが分かった。以上の結果を論文にまとめ、学術誌に投稿した。 (A) については、西はりま天文台なゆた望遠鏡を用いて、地球照の可視光偏光撮像観測を継続した。また、(A)、(B) における、なゆた望遠鏡での近赤外偏光撮像観測を可能にするために、近赤外観測装置NICへの偏光観測モード導入準備を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(共通項目)については、本研究全体の最終段階で検出可能性評価法の開発を行う予定であったが、予定を早めて実施し、学術論文として成果を発表するに至った。また(C)についても、学術論文を投稿する段階まで進み、当初予定していた研究内容の大部分を完了したと認識している。(A)、(B)については、観測データ取得の進捗がやや遅れ気味ではあるが、総合して「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(A)、(B) における、地球照の近赤外偏光撮像観測を可能にするために、近赤外観測装置NICへの偏光観測モード導入に注力し、できるだけ早い観測開始を目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度に受理された論文の投稿料の請求が、次年度になったため。また、研究計画の組み替えにより、研究(A), (B) の実施予定が後ろ倒しとなり、海外での観測滞在が未実施のため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文投稿料は次年度初頭に支出する。また、研究(A), (B)を進捗させ、国内観測の結果がある程度出揃った段階で、海外観測の実施を検討する。
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