2017 Fiscal Year Annual Research Report
Anthropological Study on Former Military Site Development and Reconstruction of Social Space in Okinawa , Japan
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15K21297
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
越智 郁乃 立教大学, 観光学部, 助教 (10624215)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 軍用跡地 / 記憶 / 記録 / 住民コミュニティ / ツーリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、現代沖縄の重層的な権力構造の基で行われる軍用跡地開発をとりあげ、そこでの社会空間の再構築と住民コミュニティの関与について文化人類学的に探究する。 平成29年度は那覇市を中心とした都市域における旧住民コミュニティを主体とした社会空間の再構築について、他地域(基地周辺都市域、農村地域)また、国外(台湾、ドイツ)における同様の事例と比較しながら基地跡地や戦跡地、あるいは戦争関連建造物の再利用のあり方、将来ビジョン策定への住民関与について考察し、学際的な視座の構築を試みた。具体的には、まず沖縄嘉手納基地に隣接地の戦後から本土復帰までの変化と住民コミュニティの関与、都市域に対比して農村地域の農地回復やリゾート地への転換を調査した。上記調査を踏まえ台湾における旧植民地建築の再利用、ドイツにおける第二次世界大戦から東西冷戦期の戦時遺構等の保存活用に関する調査資料から、土地建物の利用と往時の記憶の保存や表象との関わりについて考察を深めた。その結果明らかになったのが住民による戦前・戦後の記憶、とりわけ「日常の記憶」に関する表象の活発化であった。世界的に「リビング・ヒストリー」や「個々人の記憶」は、特に博物館等で1990年代から展示の取り組みがなされてきたが、現在台湾やドイツでは館外、とりわけ市街地再開発の過程で商業施設にも溶け込む形で展示されることで、住民以外、特に旅行者にも開かれた存在になっている。沖縄では沖縄戦に関する資料館は多いが、占領期の記憶表象に関しては少なく、近年住民コミュニティが独自に資料集を編纂する。しかし、軍用地や市街地再開発への住民の新しい街への違和感は高まる中で、戦前の記憶に加えて占領期の記憶を何らかの形で提示することは、社会空間の再構築に欠かせない取り組みであると言える。こうした取り組みを外部に提示していく活動を街づくりに組み込む必要があると考える。
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