2016 Fiscal Year Research-status Report
非環式レチノイドによるオートファジー制御メカニズムの解析
Project/Area Number |
15K21310
|
Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
岡本 恭子 長崎県立大学, 看護栄養学部, 助教 (40714853)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 肝癌の化学予防 / オートファジーのメカニズム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度、GGAが誘導するオートファジーの不完全応答について詳細に調べ、オートファゴソームとリソソームの融合により形成されるオートリソソームの成熟に重要な役割を果たすことが知られているRAB7たんぱく質の機能障害をGGAが誘導する可能性を見出した。RAB7たんぱく質はリソソームに主に存在し、オートファゴソームとの融合の際、オートファゴソームに存在するLC3-IIたんぱく質と結合することが知られている。しかしながら、GGAの添加によりその結合が阻害されることをRAB7抗体を用いた免疫沈降法によって見出した。28年度はさらに、GGAによるオートファゴソームとリソソームの融合の阻害メカニズムとして、RUBICONたんぱく質が関与する可能性を見出した。RUBICONたんぱく質はBECN1たんぱく質と複合体を形成することで、オートファゴソームとリソソームの融合を阻害することが近年わかってきたタンパク質である。HuH-7細胞へのGGAの添加によってRUBICONたんぱく質が顕著に増加し、オートリソソームの形成が顕著に低下した。この結果は2016年度に行われた第39回日本分子生物学会年会にて発表した。オートリソソームの形成には本来BECN1たんぱく質とUVRAGたんぱく質の複合体が関与するが、RUBICONたんぱく質はこの複合体ができるのを阻害すると考えられており、現在はこれらのたんぱく質に対する免疫沈降法などで複合体の形成に変化が生じるかなどを検証している段階である。また、28年度はp53たんぱく質の変異体を発現させた細胞株(ヒト肝癌細胞株Hepa3Bを用いた)を作製し、GGA添加後のER stress応答の変化について検証を開始し、現在も継続中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来研究計画に盛り込んでいたプロテオームによるオートファジー関連たんぱく質の網羅的解析は、初年度の中間報告で述べたように、現在も予算が工面できず実行できていない。 しかしながら、予定通りに研究が実行できなかった場合の他の実験系(p53たんぱく質の変異がGGAの刺激にどのような影響を与えるかの解析など)については実験法などを確立し、現在も続行することができている。現在はERストレスとの関連について結果を検証しており、p53の変異とGGGAが誘導する細胞死との間に関連がありそうなので、そちらの検証に力を入れている段階である。 また、学会発表などで他の研究者の意見を聞く機会を得ることで、細胞死の誘導メカニズムに関与すると思われる新しい研究対象(前述したRUBICONたんぱく質など)を見出すことができ、その研究に関しても検証実験を継続している段階である。 28年度に作成を予定していたオートファジー関連遺伝子のノックアウト細胞の作製については、ノックアウトする遺伝子をもう少し絞りたいと考えているので、前述の研究結果をまとめてから着手したいと考えている。RUBICONたんぱく質に関しては、GGAの添加によってたんぱく質レベルで発現量が増加することから現在ノックアウトを実行中であり、検証を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、「1.平成28年度の研究で滞った研究について」プロテオーム解析によるGGA添加に伴うオートファジー関連たんぱく質の特定を予定していたが、こちらは予算上目途が立てられないので、現在実行している既知のオートファジー関連遺伝子とGGA添加に伴う変化について引き続き検証していく。「2. オートファジー関連たんぱく質のノックアウト細胞の作製」RAB7たんぱく質のようにキーとなるたんぱく質が見出された場合、そのたんぱく質のノックアウト細胞を作製し、研究を進める。今はまだノックアウトする候補を絞り切れていないが、GGA添加によってたんぱく質レベルで変化量が見られるRUBICONに関しては実行中である。「3. p53たんぱく質とオートファジーの関連の検証」28年度はp53変異細胞株、p53野生型細胞株を作製しているので、その細胞についてGGAの添加によって、p53と関与するタンパク質の変化を見出したものについて結果をまとめていく。細胞死などに関連のあるERストレスとの関連があるような結果が得られてきたので、それについて検証し、結果のまとめを行う。「4. 肝癌細胞以外のヒト癌細胞株での検証」GGAは肝癌予防効果が期待されているが、細胞株によって効果が見られない場合もあるので、どの様な細胞に効果があるかを検証すると線維芽細胞、大腸癌細胞など肝癌以外の細胞でも細胞死が誘導される細胞株があった。今後は近年利用できるようになったヒトの正常細胞への影響を検証し安全に使えるものとして検証していく予定である。
|
Causes of Carryover |
前年度、予算が使い切れず繰り越した分が多かったため、今年度もすべては使い切れなかった。しかしながら今年度の次年度使用額は23,000円ほどなので、極端に使用しなかったということではないと考える。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに新年度に購入した遺伝子導入した細胞を選択する抗生物質の試薬代として使用したいと考えている。
|