2015 Fiscal Year Research-status Report
生物学的効果を最適化した放射線治療に向けたバイスタンダー効果誘発機構の解明
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15K21313
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
佐々木 恒平 北海道科学大学, 保健医療学部, 准教授 (20736376)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイスタンダー効果 / 数理モデル / モンテカルロシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,コンフルエント細胞環境でのバイスタンダー効果(以下,BE)伝達シミュレーションモデルの開発を遂行した。 コンフルエント環境でのBEのシグナル伝達動態を解析するために,HuらによるBE実験を再現するシミュレーションモデルを構築した。申請者はこれまでに後述する培地経由BEモデル,ボロノイ分割を用いたコンフルエント細胞モデル,GJIC経由BEモデルを開発してきた。平成27年度は,これらのモデルを統合し,より複雑なシグナル伝達動態を示すコンフルエント細胞環境でのBE伝達シミュレーションモデルを開発した。このモデルによるシミュレーションにより,BEが拡がる範囲,伝達に要する時間といったシグナル伝達動態の推定を可能とした。 上記で開発したシミュレーションモデルを使用して,統計的に十分な回数で繰り返しシミュレーション計算を行った後,放射線照射後の時間毎に,BEによりDNA二本鎖切断(DSB)が生じた細胞 (DSB陽性細胞)とBE伝達のスタート位置である照射細胞の平均距離を求めた。また,このシミュレーション結果と,文献で得られた放射線照射および二つのBE伝達経路で生じたDSB陽性細胞数の時間変化を比較することで,それぞれの経路におけるシグナル伝達速度の推定に成功した。【 次に,前述したモデルにおいて,生成したDSBの修復に関与する時間変化には実験データをそのまま適応することを考えていたが,放射線の微細な物理的効果をモデル化するMicrodosimetric Kineticモデル(MKモデル)を拡張することで,細胞内で生成したDSBの修復動態を再現することができた。 以上の成果は,放射線影響および放射線医療に関するトップカンファレンスである,International Congress of Radiation Research (京都)で招待講演において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたコンフルエント細胞環境でのバイスタンダー効果に対するシミュレーションモデルの構築に成功した。当初シミュレーションで推定したDNA二本鎖切断の時間動態について,実験データの当てはめを考えていたが,適切なデータを入手できなかったため,放射線のミクロな物理学特性を考慮した詳細なモデルである,Microdosimetric Kineticモデル(MKモデル)を拡張することで様々な条件に応用可能なモデルを構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度開発したシミュレーションモデルに細胞周期を導入する。それと同時に当初計画した,活性酸素種(ROS)マーカおよびカルシウムイオン検出試薬を使用した培地交換実験を行い,シグナル伝達速度の調査を行う。さらに,平成29年度には放射線輸送計算コード(PHITS, Geant4)を用いて,放射線量とバイスタンダー効果の進展範囲の関係を評価する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた細胞実験に使用する試薬を次年度に購入するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に行う実験に合わせて試薬を購入する。
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Research Products
(2 results)