2016 Fiscal Year Research-status Report
義歯安定剤が咀嚼能力改善に及ぼす影響に関する総合的検討
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15K21318
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
野村 太郎 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (80405779)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 義歯安定剤 / 可撤性義歯 / 咀嚼能力 / 高齢者 / 微生物 / c.albicans |
Outline of Annual Research Achievements |
義歯安定剤は薬局等で市販されており患者は歯科医師の指示がなくても自ら購入し使用可能であるのが現状である.しかし,義歯安定剤の効果について明らかになっている部分は多くはない.そこで義歯安定剤の使用が及ぼす種々の影響,効果について検討したので報告する. 【方法】本年度も継続して義歯不適合を主訴とする患者および長期的に義歯を使用し定期健診を希望する患者を被験者とした.4週にわたり義歯安定剤(クリームタイプ)を使用して頂きその期間中の主観的,客観的評価の経時的変化を検討した.また,In vitroで義歯安定剤に対する微生物の付着,増殖能力(3,6,12,24時間)についての検討を行った. 【結果】本年度は初年度より被験者数を増加することができた.得られた結果から,主観的評価項目の1つである口腔関連QOLは多くの被験者で改善する傾向を示した.また,他の主観的評価項目である患者満足度や客観的評価項目であるガム咀嚼能力において,義歯安定剤使用前から高値を示す被験者群では義歯安定剤使用による大きな変化は生じなかった.一方,当初の満足度や咀嚼力の値が低値~中等度の群では改善する傾向が示唆された. 義歯安定剤へのC.albicansの付着様相は各種義歯安定剤を使用した群の方が付着量は多かった.経時的に増殖した微生物数の変化は付着後初期に大きく増加しその後の変化は微増であった. 【考察・まとめ】使用している義歯に対する満足度が高い患者では,義歯安定剤を使用したとしても,各種評価項目に大きな変化がなかった.これは初年度の結果からも同様の傾向がみられていたが,被験者数が増えた本年度でも同様の結果を得ることができた. 微生物学的検討からは,義歯安定剤の使用により付着する微生物数が増加し,比較的付着初期での増殖率が大きくなることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
義歯安定剤に対する微生物学的検討において初年度の課題であった,ゲル化した義歯安定剤から微生物を抽出することが可能となったため,in vitroで微生物の付着,増殖様相の観察を行っているが,実験結果にまだばらつきがみられるため継続する必要がある. 機能評価についても被験者母集団が多い方が結果の信頼性が上がるので継続して被験者リクルートを行う必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
顎堤の吸収状態や歯の欠損の状態により群分けしそれぞれの群間での機能評価の結果を比較検討する予定であるため,無歯顎者に限らず可能な限り被験者数を増加させる.微生物学的検討についても継続し実験回数を増やして結果を検討する.平成29年度は学会での報告を重ねていく予定である.
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Causes of Carryover |
次年度使用額は生じたものの多額ではなく概ね予定通り進めることができたと考える.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
(使用計画) 被験者ごとに使用する義歯安定剤や咬合力計測シートなどの消耗品の購入し実験を継続する.微生物学的な検討を実施する際に必要な試薬や,ディスポーザブルな滅菌器具の購入に研究費を使用する.検討結果を発表する際の旅費にも研究費を使用する.
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