2015 Fiscal Year Research-status Report
ナトリウム依存性グルコース輸送体(SGLT)による体液量調節機構の解明
Project/Area Number |
15K21321
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
増田 貴博 自治医科大学, 医学部, 助教 (10424037)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | SGLT2 / 体液量 / Na輸送 / 生体電気インピーダンス法 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ナトリウム依存性グルコース輸送体(SGLT)が体液量調節に関与するかを明らかにすることを目的とし、特に尿細管Na輸送の役割に着目し検討している。また、体液量評価法として、従来にはない非侵襲的体成分分析法である生体電気インピーダンス法を用いている。 現在までの検討で、①選択的SGLT2阻害薬イプラグリフロジン(Ipra)は、自由摂食・飲水下の非糖尿病モデル(Sprague-Dawley rat)で尿中Na排泄量・尿量を増加させるが、食餌量・飲水量増加により体液量を変化させないこと ②自由摂食・飲水下の糖尿病モデル(Spontaneously Diabetic Torii rat)では、食餌量・飲水量・尿中Na排泄量・尿量のいずれも非糖尿病モデルより高値であったが、Ipra投与による変化はなかったこと ③非糖尿病モデルで、Ipra投与時に食餌量・飲水量をIpra非投与群と同等に制限すると、尿中Na排泄量・尿量増加により体液量が減少すること を明らかにした。さらに、Ipra投与により近位尿細管に発現する水・Na輸送体であるSGLT2, SGLT1, pS605 NHE3, AQP1の発現が変化するのに対し、近位尿細管より下流の尿細管(ヘンレの係蹄~集合管)に発現するNa輸送体の発現は変化しなかった。 以上の結果から、SGLT2阻害薬イプラグリフロジンは、食餌量・飲水量と独立した尿中Na排泄促進・尿量増加作用により体液量を減少させること、同薬剤の作用部位である近位尿細管にてNa輸送に関与すること、が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、選択的SGLT2阻害が体液量・尿細管Na輸送に及ぼす影響と機序の解明を計画していたが、おおむねそれらの結果は得ている。SGLT2阻害薬投与時に自由摂食・飲水下では非糖尿病・糖尿病モデルのいずれにおいても体液量は変化しないこと、近位尿細管に発現する水・Na輸送体の発現が変化することを明らかにした。さらに、非糖尿病モデルではSGLT2阻害薬投与時に、尿中Na排泄量・尿量・食餌量・飲水量のいずれも増加し、結果として体液量が変化しなかったことから、当初の計画にはなかった食餌量・飲水量制限下での実験を追加した。その結果、尿中Na排泄量・尿量増加は持続し、体液量は減少することが明らかとなった。このことにより、SGLT2阻害薬イプラグリフロジンは、食餌量・飲水量と独立した尿中Na排泄促進・尿量増加作用により体液量を減少させると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の結果を踏まえ、当初の計画通りSGLT1,2両阻害が体液量・尿細管Na輸送に及ぼす影響と機序を解明するため、SGLT1,2両阻害薬Phlorizinを用いた検討を計画している。 一方、これまでに用いた非糖尿病モデル Sprague-Dawley rat、糖尿病モデル Spontaneously Diabeti Torii ratは、いずれも体液貯留を来さないモデルであった。そのことで、SGLT2阻害薬投与でも生体の恒常性維持機構により体液量を変化させなかった可能性がある。最近我々は、体液貯留を来たした糖尿病性腎症患者へのSGLT2阻害薬投与が、尿中Na排泄促進により体液貯留を改善することを報告している(Drug Target Insights 2015, 日本内科学会 第623回 関東地方会)。また、EMPA-REGアウトカム研究(N Engl J Med 2015)では、SGLT2阻害薬投与による心血管イベント抑制効果が報告されているが、その機序として体液貯留の改善による心保護作用が考えられている。このことから、体液貯留を来たす食塩感受性高血圧モデルであるDahl ratを用いて、SGLT2阻害薬投与による体液量減少作用、尿中Na排泄促進作用、さらには心保護作用についても検討していく方針である。
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Research Products
(11 results)