2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K21329
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
渡邉 観世子 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 講師 (80433613)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 杖 / 荷重知覚 / 距離知覚 / 歩行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,正確で安全な杖操作の指導方法への示唆を得るために,杖操作に伴う荷重および距離知覚の変化特性を検討している.一般的に杖の使用は姿勢の安定や痛みの軽減などの利点が大きいが,高齢者ではその使い方が困難で転倒のリスクを高めるとの報告がある.したがって杖を処方する際には,杖の使用に伴う欠点の理解も必要であると考えられる.本研究では歩行時に杖を使用することで荷重や距離の知覚がどのように変化するかに着目している. 平成27年度は,若年健常成人を対象に実験を行った.まず,歩行時の杖操作における距離知覚の変化について,歩行時に杖を使うことで,歩幅調整の正確性にどのような影響があるかを調べた.実験では杖の有無と歩幅の大きさ(通常,小さい歩幅,大きな歩幅)を要因として検討した.歩幅要因の設定は,快適速度での歩行時の歩幅を計測し,その「通常の歩幅」に対して20%短い歩幅を「小さい歩幅」,20%長い歩幅を「大きな歩幅」と設定した.歩幅調整の正確性は,目標となる歩幅の大きさからの誤差と歩行中の歩幅のばらつき(一貫性)を指標とした.その結果,杖の使用により小さい歩幅調整における正確性が低くなること,歩幅のばらつきが大きくなることが分かった.したがって,臨床現場では安全のために小さな歩幅での歩行を推奨することが多いが,杖を使用する際には,歩幅が正確に調整できないこと,また杖の使用によって歩幅の一貫性が阻害されるため,このような歩行のバランスの悪化が転倒につながる危険があることが示唆された.現在は,歩行時の杖操作における荷重知覚の変化について実験を実施している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に計画していた若年健常成人を対象とした検討は順調に進んでいる.距離知覚や荷重知覚の正確性について,誤差の大きさとパフォーマンスのばらつきという2つの指標で捉えることで,杖操作の影響を多角的に捉えることができた.現段階では全体の平均値を対象に分析をしているが,今後は個別のパフォーマンスも詳細に検討することで,杖操作の影響をさらに広く理解することができると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
当初は歩幅条件の設定を下肢長に対する割合で設定することを計画していたが,今回の実験の際に,各個人の歩幅は下肢長や身長に規定されないことが明らかとなったため,各対象者の快適速度での歩行を計測し,その際の歩幅を「通常の歩幅」と規定し,通常の歩幅に対して小さい歩幅と大きい歩幅を設定することに変更した.平成28年度は高齢者を対象として実験をおこなう予定であるが,若年健常者よりも個人差が大きいことが予想されるため,今回と同様に各対象者の快適速度での歩幅を基準として進めていく.また実験を進めていく際に,高齢者のパフォーマンスの個人差が大きいことが明確な場合には,対象者数を増やすことや,全体の平均値ではなく,いくつかのパターンに分類して解析することも検討していく.
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Causes of Carryover |
平成27年度は実験環境を整えるために実験機器の購入に関する支出があった.実験に必要な環境はほぼ整い,13,000円の残金は誤差範囲である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は実験機器の購入予定はなく,主に平成27年度に購入した機器を用い,実験環境のわずかな調整のみで研究を遂行できる予定である.その他,実験成果の公表(学会発表,論文投稿)や実験参加者への謝礼への支出を予定している.
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Research Products
(5 results)