2015 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病と一過性脳虚血併発時の障害悪化に対する硝酸塩/亜硝酸塩の改善効果の解析
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15K21330
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
岩田 直洋 城西大学, 薬学部, 助手 (50552759)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 一過性脳虚血 / 酸化ストレス / 硝酸塩 / 亜硝酸塩 / 一酸化窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病は、脳血管疾患の発症率を数倍に増加させる危険因子である。また、糖尿病に脳虚血を併発した場合、脳障害が急速に悪化することも報告されているがそのメカニズムは未だ明らかではない。一方、脳梗塞への薬物治療は、適用時期の制約などから選択薬は非常に少なく、根治は困難を極めていることからも脳梗塞に陥らないための一次予防が重要視されている。 緑葉野菜に多く含まれる硝酸塩は、口腔内のバクテリアによって亜硝酸塩に還元される。亜硝酸塩は生理的に不活性であり、これまでは一酸化窒素(NO)の単なる代謝産物であると考えられてきた。しかし近年、体内に貯蔵された亜硝酸塩が低酸素や虚血時において化学的にNOに変換され、虚血性NOドナーとして作用することで虚血性脳疾患に対して軽減効果を示す可能性が考えられているが、その詳細は明らかではない。そこで本研究は、糖尿病および一過性脳虚血併発モデルラットを用いて脳障害悪化のメカニズムを明らかにするとともに食餌由来の硝酸塩/亜硝酸塩が医薬品の代替として有効か否かを明らかにすることを目的とした。 ラットの脳虚血/再灌流モデルを用いて検討した結果、亜硝酸塩の濃度には脳保護効果を示す最適値が存在し、虚血直後の静脈内投与により脳保護効果が認められた。また、投与のタイミングも重要であり、再灌流後の投与では効果を示さないことも明らかになった。一方、糖尿病態ラットにおける脳虚血/再灌流群では、亜硝酸塩による保護効果はすべての条件下で見られなかった。さらに、非糖尿病に比べて糖尿病態ラットの脳ではスーパーオキシド産生や炎症が惹起されているのに対し、亜硝酸塩投与群では顕著にこれらの発現を減少させた。以上の結果より、亜硝酸塩は虚血性脳障害に対して保護効果を示すことが明らかになったが、糖尿病態においては亜硝酸塩の長期摂取も踏まえて今後さらに検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施項目として以下の3項目を計画しており、①糖尿病と一過性脳虚血併発における障害の増悪機序について解析する。②亜硝酸塩投与における脳組織内のNO産生量を病態間で明らかにし、糖尿病モデルラットに対する亜硝酸塩の脳保護効果を示す条件を明らかにする。③緑葉野菜など食餌由来の硝酸塩が医薬品の代替として有効か否かを明らかにするため継続的に緑葉野菜を摂取させた後に一過性脳虚血を処置して脳保護効果を判定することを計画した。 初年度となる平成27年度では、上記①、②の項目について実施途中ではあるが、非糖尿病に比べて糖尿病態ラットの脳においてスーパーオキシド産生、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)およびニトロチロシンの発現増加などを確認しており、酸化ストレスおよび炎症反応の増強が示された。そこで次年度以降は、さらに詳細に増悪機序について解析していく。 また、非糖尿病態の一過性脳虚血に対する亜硝酸塩の最適濃度を明確にしたが、糖尿病態ではその確認には至っていない。そこで、この病態間における相違についてNO産生に注目し、NO電極を用いた評価を行っている。以上のことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
生体内で重要な役割をもつNOは、血管の拡張作用による血流の増加に寄与し、また、アポトーシスの抑制因子としての働きを持つ。一方で、自らがラジカルとして細胞に障害を与えることも報告されており、NOの作用は二面性を有することが知られるが糖尿病と脳虚血併発におけるNOの影響やNOドナーによる予防効果は明らかではない。そこでまず、脳組織内におけるNO産生量を測定することを次年度の計画とした。NOは、フリーラジカルであるために半減期が短く、また他のラジカルや金属と反応するため、高感度の測定が可能なNO電極法を用いる。 本研究の計画として、1)亜硝酸塩投与時の脳組織内のNO動態を脳血流量とともにリアルタイムに同時に測定すると共にNO産生のメカニズムを解析する。2)一過性脳虚血処置による脳組織内のNO産生を評価する。3)両疾患併発モデルにおける硝酸塩/亜硝酸塩の有効性を評価する。4)緑葉野菜など食品由来の硝酸塩の継続的な摂取による脳保護効果を評価する。
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Causes of Carryover |
平成27年度において購入予定であった設備備品に変更等が生じた為、当初の申請より繰越金が認められた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
脳内のNO産生を測定するために用いるNOセンサー(2本:142千円)および例数増加のために実験動物の購入に前年度繰越金をあてる予定である。28年度では、メカニズム解析を実施するため抗体、プライマー、ELISA、その他消耗品等を計上しており、当初の申請通りに使用する計画である。
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