2016 Fiscal Year Research-status Report
単一細胞解析によるhiPSCからβ細胞への分化メカニズムの解明と分化効率向上化
Project/Area Number |
15K21333
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
菅原 泉 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 研究員 (10633000)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | β細胞 / single cell / hiPSダブルノックイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はhiPS細胞に蛍光ラベルしβ細胞への分化をモニタリングできるシステムを用いてhiPS細胞からβ細胞への分化のメカニズムの解明を目指すものである。hiPS細胞からβ細胞への分化過程においてNGN3を発現する膵内分泌前駆細胞が出現するとmCherry が光る細胞となり、Insulinを発現するVenus が光る細胞を確認することができる。またβ細胞への移行の際には赤から緑に変換しているダブル蛍光細胞なども多数みられる。最終分化時のこれらの蛍光細胞群をランダムにソーティングし、今回277細胞の解析をすることができた。ソート細胞群の内容はVenus 陽性細胞は約3割未満、ダブル蛍光細胞が約4割となっている。2次解析を行った結果全細胞の約9割はインスリンを発現しているという驚異的な結果が得られた。すなわちほとんどの細胞がβ細胞へと強力に誘導されていることが分かった。分化誘導全体細胞の約4割から5割にも至る。またインスリン発現細胞群は全体的に同じようなプロファイルを示しているが、個々のこれまでに知られているβ細胞に主要な遺伝子群の発現量に目を向けていくと多種多様に発現しており、同じ細胞は存在しないことが判明した。当初の予測としては蛍光細胞によって分離された細胞群は三つのクラスターに分けられると思われていたが実際には大きく2群にしか分けられなかった。また昨年にヒト生体内のβ細胞の単一細胞解析を行った報告が3件同時に発表された。それらのデータを利用し更に詳しく解析を行ったところインスリンを発現する細胞群は7群にクラスタリングすることができ、そのほかの群としてインスリンを発現しない細胞とにクラスタリングすることができた。しかし、これらのインスリン発現細胞群のどの群が一番成熟に近いかなどの決定的なデータは今のところ得られておらず、実際のvitro の解析が今後必要となってくる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全体的な2次解析はほぼ終了しているがターゲットとなる遺伝子の選定や実際に実験を行っての解析をすることができていない。データ解析におけるトラブルなどが生じ、前解析に時間を要したために、2次解析に進めず遅れたために全体の流れが遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において277の細胞を個々に解析することができた。本研究からインスリンは全体的に発現しているにも関わらずその他の遺伝子群でもこれまでに重要であると言われているPDX1, MAFA, Nkx6,1 などの発現は様々であることがわかった。hiPS細胞からの分化事態における現象なのか生体内とのβ細胞のプロファイリングとは一致度が少ない。しかし、グルコース応答性のある細胞群であることは間違いないのだが、どの位置の細胞が成熟しているβ細胞であるか決定づける必要がある。今後はどの細胞群の中に成熟細胞が存在するかを決定し、新たなターゲット遺伝子を見つけ今後の培養条件等に反映できるようにつなげていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
hiPS細胞からβ細胞への分化誘導を行うため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新規誘導法においてhiPS細胞を3次元培養におけるメンテナンス法を確立し、将来的に大量培養によってβ細胞を誘導できる方法を探る。
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