2015 Fiscal Year Research-status Report
C3対称トリアリールベンゼンを基盤とした高次縮環系化合物群の創製と物性解明
Project/Area Number |
15K21343
|
Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
島崎 俊明 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (10452476)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 構造有機化学 / 有機合成化学 / 機能性分子 / DFT計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
アセチル基を有する芳香族化合物の酸を用いた三量化反応では,1,3,5-位にアリール基を有するベンゼンを一段階で構築可能である。この反応を利用して三種類のジベンゾヘテロールを1,3,5-位に有するベンゼンを合成し,光物性・電気化学測定を含む各種物性を精査した。このジベンゾヘテロールは強い電子ドナーとして機能する事が知られているため,次に中心の芳香族コアをトリアジン環に変えた同様の構造を有する化合物を合成し,プッシュ-プル効果による光電子物性,電気化学的性質のチューニングを狙って研究を進めた。この場合,アセチル基ではなくシアノ基の三量化反応がキーステップとなる。現在までに,中心のベンゼンコアの1,3,5-位にカルバゾリル基を有するトリアジン体の合成に成功している。その諸物性について精査した結果,吸収スペクトルにおいて分子内電荷移動吸収帯が確認された。また,電気化学測定を行った結果,その酸化種はベンゼンコアのものと比較して不安定化されており,また還元側にも還元ピークを確認できたことから,電子ドナーの性質が強い1,3,5-トリカルバゾリルベンゼンの性質をアンビポーラータイプにチューニングする事に成功したといえる。 現段階ではジベンゾチオフェン,ジベンゾフランを周辺部に有するトリアジンの合成は,その溶解度の問題によって合成できていない。今後は適切な溶解性補助基を選択する事により,これらの合成を目指す。一方で,周辺の芳香族環に長鎖アルキル基を有する1,3,5-トリフェニルベンゼンを合成した結果,ゲル化能を有する事が確認されたことから,このアルキル基をより高いゲル化能が期待できるコレステリル基に変えた化合物を数種類合成し,その置換位置と置換基数でのゲル化能の違いについて明らかにした。このタイプの化合物のゲル化に関しては当初予想していなかったが,今後はこれに関しても計画的に研究を進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初,一年目の終盤から二年目にかけては,申請書に記載した「プラットフォーム反応」を利用して炭素クラスターの合成に着手する予定であったが,一年目の初めに,予定していた1,3,5-トリスジベンゾヘテロリルベンゼンと1,3,5-トリスジベンゾヘテロリルトリアジンを合成した段階で,溶解性が非常に低く,諸物性を測定できないという問題に直面した。周辺部にカルバゾールを有するトリアジンではこの問題をクリアする事ができたが,ジベンゾチオフェン,ジベンゾフランに関しては未だ溶解性に難があり,完全に精製する事ができていない。平成28年度は,まずこれをクリアした後,歪んだ芳香族化合物の合成に着手する予定としている。 また,上記の通り,この研究を行っている途中で,1,3,5-位にコレステリル基を有するベンゼンがゲル化能を発現する事を見出した。これに関しては非常に順調に研究が進み,論文発表,学会発表を行う事ができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,まずジベンゾチオフェン,ジベンゾフランを1,3,5-位に有するトリアジンに関して,適切な溶解性補助基を選択し,精製から物性精査を行う事を目指す。カルバゾールに関しては合成と諸物性精査に成功しているため,これらをまとめた上で論文発表と学会での発表を行う予定である。また申請書に記載の通り,本年度からこの「プラットフォーム反応」を利用して歪みの大きな芳香族化合物の合成に着手する。これに関しては,予備実験において途中段階までは合成出来ることがわかっているため,最後の環化芳香族化の段階がキーステップとなる。InCl3やDDQ等を用いて種々検討を行っていく予定である。またこれは申請書には記載していないが,上記の検討段階で見出した星型構造を有するゲル化剤に関しても,今後は芳香族環の種類を変えて引き続き研究を行っていく予定である。
|
Causes of Carryover |
消耗品の購入に関して,試薬会社からの割引価格が当初予定していた金額よりも大きかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今回生じた次年度使用額(8,050円)は,おおよそ消耗品費の割引額から生じたものであるため,主に消耗品費としての使用を予定している。
|
Research Products
(2 results)