2015 Fiscal Year Research-status Report
結晶性を制御した酸化セリウムナノ粒子を利用したセルロースの水熱解重合
Project/Area Number |
15K21378
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
田口 実 中央大学, 理工学部, 助教 (00455859)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | セルロース / バイオマス / 金属酸化物 / 触媒 / 水熱反応 / リン酸化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
高温高圧用撹拌型反応器を使用して、金属酸化物(固体不均一)触媒存在下でセルロースの加水分解を実施した。触媒反応を実施する前に、無触媒下におけるセルロースの重合度及び結晶化度の温度(120~240℃)、時間(2~24h)、撹拌速度(~1000rpm)の依存性を検討した。セルロース(1.5g)試料としてろ紙(重合度1200、結晶化度84%)を用い、それを約5mm角にして反応させた。 ろ紙を水(50mL)熱条件下で反応させたところ、180℃以上で分解が開始された。180℃以下では、ほぼ未反応であった(重合度及び結晶化度に変化なし。)。180℃以上で反応させた試料の固体残渣は、温度が高くなると重合度は低くなり、240℃では重合度計測において、計測できない低分子領域まで分解する。対照的に、結晶化度は反応温度に依存した顕著な変化は見られなかった。一方で、反応時間については、24h以内の反応では、大きな変化は観測されなかった。反応後の炭素収率を基準とすると、220℃-2hが最も高い収率を示した。240℃では、重合度は最低になるが、炭素収率も下がる。これは、生成物のガス化あるいは炭化(不溶性物質)が起こっていることが示唆される。従って、220℃-2hにおいて重合度が低くなり、炭素収率が高くなったので、この条件をもってして触媒反応を実施した。また、撹拌については、撹拌する方がやはり効果的であり、500rpmが上記条件下で最適であることも確認した。 CeO2を初めとして、様々な金属酸化物(ZrO2、ZnO、ヒドロキシアパタイト、リンタングステン酸、リンモリブデン酸)のバルク結晶を準備した。これら金属酸化物を触媒として利用し、セルロースの水熱加水分解反応を試みた。ZnO及びリンモリブデン酸を触媒として利用した場合、セルロースを加水分解させることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に類似する研究はなく、金属酸化物(固体不均一)触媒を利用した新規反応につき、初年度は分解率(重合度評価)や炭素収率の観点から反応条件を精査した。その結果、最も収率が高くなる条件を見出すことができた。その反応条件下で種々金属酸化物触媒を用いたところ、触媒活性を示すものも明らかになった。本研究課題にもあるように、セルロースに対するCeO2の触媒活性を期待したが、ZnOやリンモリブデン酸がそれ以上の効果を示したことから、効果がある金属酸化物に切り替える。また、金属酸化物触媒とセルロース固体残渣とを分離し、簡単に生成物を抽出することが課題としてある。
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Strategy for Future Research Activity |
ZnO及びリンモリブデン酸に触媒効果があることが確認できた。新たな金属酸化物の触媒効果を探索すると同時に、生成物(グルコースやオリゴ糖など)との相関性も確認していく。触媒効果が確認された金属酸化物について、結晶性(粒子径、形状、結晶相等)を制御し、その触媒効果を検証していく。そして、触媒反応原理を明らかにする。一般的な触媒反応は、主に表面での反応であるため、この原理解明には、特に金属酸化物の表出結晶面を精査する必要がある。この結晶面と、これまで報告されている金属酸化物の触媒原理と照合して考察していく。従来、セルロースの水熱加水分解にはpHが強く影響していた。特に酸性条件下でその加水分解は促進する。従って、反応前後のpHを細かく調査していく。また、金属酸化物触媒とろ紙セルロース試料との分離プロセスが課題であるが、これを解決するために、セルロース試料をろ紙から微結晶セルロースへ変更しようと考えている。微結晶セルロースは溶解性(分解性)が高いため、今よりも容易に生成物を含む残渣試料と金属酸化物触媒を分離できることが期待できる。 化学工学の観点から、生成物収率と経時変化から反応速度及び活性化エネルギーも算出していく。これは、反応速度論を専門とする申請者所属研究室主宰の船造教授に指導して戴く。一方で、セルロース試料状態の形状や表面状態のマクロ的な経時変化をin-situで顕微鏡観察すると同時に走査型電子顕微鏡(SEM)でも整合性を裏付けていく。そして、この触媒反応モデルを提示する。最終的に、本研究結果を基礎として、最終的に適当な触媒を利用して実際の廃木材の多糖類物質の解重合反応を試験していく。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Multistage ordering and critical singularities in Co1-xZnxAl2O4 (0<x<1): Dilution and pressure effects in a magnetically frustrated2015
Author(s)
T. Naka, K. Sato, Y. Matsushita, N. Terada, S. Ishii, T. Nakane, M. Taguchi, M. Nakayama, S. Ohara, S. Takami, A. Matsushita
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Journal Title
Physical Review B
Volume: 91
Pages: 224412/1-10
DOI
Peer Reviewed
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