2016 Fiscal Year Research-status Report
最適テスト法と双方向 e-learning システムの実装
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15K21379
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
作村 建紀 中央大学, 理工学部, 助教 (50735389)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 適応型試験 / 能力バイアス / 必要出題数 / 能力評価モデル / 項目特性 / 蓄積疲労モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,e-learning学習支援システムのようなオンライン学習において,これまでに考案されてきた学習者の能力評価モデルに対して,ある一定の精度を保つために必要な出題項目数を整理するとともに,そのときに生じる推定量のバイアスを補正する方法を研究し,その成果を国際学会および国際ジャーナルに論文として発表した.また,信頼性分野の知見を活かした評価モデルについて,時間とストレスの関係に着目したモデルを考案し,その成果は国際学術誌の一つの章にまとめて掲載した.今年度の研究費は,主に上記の研究を遂行するための研究調査および計算機端末・書籍などの購入に充てられた.
1. 能力評価モデルの推定精度の比較およびそのバイアス補正法の提案についての研究成果は,国際会議にて発表した.また,それをさらに発展させた研究成果は,国際ジャーナルに論文として発表した.この研究では,オンライン学習における能力評価モデルに対し,同条件の試験条件下で,ある一定の能力評価精度を保つまでに必要な問題出題数を,シミュレーションによって明らかにした.さらに,それぞれの推定法において,問題数と能力評価精度の関係を明らかにした上で,各出題数ごとの能力推定量のバイアス補正を行う簡易な方法について述べた.その補正法を用いることで,オンライン学習の初期段階に大きく現れる能力の過大評価や過小評価を改善し,よりアダプティブに問題項目を出題するシステムとなる.
2. 信頼性モデルについての研究発表は,国際会議にて発表するとともに,国際学術誌の一つの章にまとめて掲載した.この研究および発表では,時間とともに過去の回答によるストレスの一部が蓄積する信頼性モデルを考案し,そのパラメータ推定にはMCMCを用いる手法について提案した.これは学習者の学習時における疲労(またはそれに類するもの)の影響を考慮したモデルと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の研究実施計画では,まず,オンライン学習時の最適な能力評価モデルについて検討する計画をもとに,従来の能力評価モデルについて詳しく検証することから始め,それを踏まえて,信頼性工学の知見を援用した評価モデルを検討することを目標とした.能力評価モデルの検証では,モンテカルロ・シミュレーションを用いて,擬似的な試験を行い,各能力評価モデルで出題ごとに能力推定を行う方法に依った.この検証により,それぞれの能力評価モデルの特徴が明らかとなり,期待されていた重み付き最尤推定モデルよりもベイズ推定モデル(特に事後平均によるモデル)の方が安定した結果を示すことが分かった.MCMCモデルも同程度の水準で良い結果であったが,十分な精度を保つための計算時間が大きく,オンライン学習時の実使用場面を考慮すると,適切ではない結果となった.また,これらの結果から,能力推定精度と出題問題数との関係が明らかになり,それぞれの評価モデルにもとづいてそのバイアス補正を行う方法を考案した. 一方,オンライン学習への援用に向けた,新たな信頼性モデルの考案を行った.このモデルは,時間とともにストレスの一部が蓄積していくモデルであり,学習者それぞれのストレス蓄積の度合いを個別に評価できるモデルである.回答者は常に一定の能力を発揮するとは限らず,回答によるストレス(またはそれに類するもの)の影響で本来の能力が発揮できなくなると考えることができる.そのストレスの影響度は個人によって異なるものである.このモデルのパラメータ推定には,最尤推定およびMCMCによる推定を用いることができる. さらに,これまでの結果を踏まえて,従来の試験システムを改善し,小規模な試験システムを構築することを目標として掲げていたが,現段階では着手できておらず,次年度に持ち越すこととした. 以上の内容から,やや遅れていると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策については,今年度の進捗を踏まえ,次年度では,まず項目特性が未知である場合の能力評価精度について,EM-Type IRTの有効性の検証を行う.次に,これまでの結果をもとに,EM-Type IRTを試験システムに組み込み,双方向e-learningシステムの構築を目指す.この試験システムには,システム受験者が増えるごとに項目特性を再評価する機能を持たせる.この項目特性の再評価による能力評価への影響は,確認しておかなければならない事項であるため,これを行う.
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Causes of Carryover |
今年度に注文していた書籍が,在庫不足のため,出荷が遅れており,次年度に持ち越すこととなった.その差額分である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度に注文していた書籍の購入代として使用する.
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Research Products
(13 results)