2015 Fiscal Year Research-status Report
イスラミック・ツーリズムにおける社会的企業をめぐる実証・理論研究
Project/Area Number |
15K21381
|
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
安田 慎 帝京大学, 経済学部, 講師 (60711653)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | イスラーム / イスラミック・ツーリズム / ハラール / ムスリム観光客 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、中東諸国と東南アジア諸国におけるイスラミック・ツーリズムに関わる社会的企業の概況を調べるべく、中東諸国では湾岸諸国のアラブ首長国連邦、オマーン、カタルを対象に、東南アジアではシンガポールとマレーシアを対象にフィールド調査を実施した。一連のフィールド調査より、両地域では方向性は違いながらも、市場規範をもたらす中間支援組織が重要な役割を果たしていることを明らかにした。 中東諸国では国や政府関係者、企業家を中心にフィランソロピーによるイスラーム文明遺産を保全・振興する文化団体・慈善団体の設立が相次ぎ、市場規範の形成に強い影響力を保持していることを明らかにした。さらに、それらの組織によって観光施設(博物館、美術館)や観光・文化イベントの設立が相次ぎ、イスラミック・ツーリズム市場発展の中心的存在になっていることを確認した。 他方東南アジア諸国ではイスラーム的観光市場の市場価値の向上を目指し、ガイドライン策定や認証制度の推進、専門人材育成のためのモジュールの開発を行う中間支援組織が産官学の連携のもとに設立されていることが明らかになった。 その他に中東諸国、東南アジア諸国におけるイスラミック・ツーリズム関連の文献資料収集や、イスラミック・ツーリズムの研究者ネットワーク形成も同時に実施した。その結果、シンガポールの南洋工科大学のジョアン・C・ヘンダーソン氏とのネットワーク構築と、別資金による日本への招聘を実現し、今後のイスラミック・ツーリズムの国際共同研究の推進における提携について確認した。 最後に、2015年6月のスペイン・ジローナ大学と9月の上智大学において本研究に関わる国際発表を行い、関連研究者との議論を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フィールド調査においてイスラミック・ツーリズム市場における社会的企業としての中間支援組織の役割が明らかになった点に加え、東南アジアにおいては関連機関への聞き取り調査を通じて現状を把握するだけでなく、市場規範形成における役割についても貴重なデータを入手することに成功した。中東諸国についても東南アジア諸国とは性格は異なりながらも、一連の中間支援組織としての文化団体・慈善団体によるフィランソロピー的活動が市場規範形成に重要な役割を果たしていることを確認した。 また、関連資料についても収穫があった他にも、東南アジアにおいてイスラミック・ツーリズム研究に関わる多数の研究者とのネットワーク構築を行えたことは、今後の更なる研究の進展にとってもプラスであると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は中東諸国における文化団体・慈善団体をはじめとする社会的企業に対する聞き取り調査実施の他、研究者ネットワークの構築を目指す。特に、アラブ首長国連邦、オマーン、カタル、クウェイトにおける調査を通じて、これらの団体とのネットワークを構築していく予定である。 さらに、中東諸国、東南アジア諸国や欧州における国際研究発表を通じて、研究者ネットワークをさらに強固なものにする他、英語論文という形で国際的な研究発信を推進する。 さらに、既に国際共同研究の話があがっているマレーシア・国際イスラーム大学やマレーシア・イスラーム科学大学との連携を深めていくことを計画している。、
|
Causes of Carryover |
英文校閲費が予定よりも安く済んだため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降の国外研究成果発表における英文校閲費として使用する予定である。
|