2016 Fiscal Year Research-status Report
倒産・上場廃止予測にとって最適な財務分析指標のパターン認識的選出
Project/Area Number |
15K21395
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
保坂 忠明 東京理科大学, 経営学部経営学科, 講師 (60516235)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 倒産早期予知 / AdaBoost / 財務指標選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の成果として主に、1)前年度の問題点を踏まえて望ましい財務データの収集を行った、2)収集したデータに含まれる欠損値に補完を施した、3)複数年度のデータを利用して倒産の早期予知の精度を評価した、ことが挙げられる。 成果1)について:前年度は、個別決算における貸借対照表、および損益計算書を各会社につき一期分ずつ取得していた。これを連結決算における複数期に渡るデータに変更し、さらにキャッシュフロー計算書も取得した。また、本研究で対象とする倒産企業としては、2002年1月から2016年6月の期間において一般的に実質破綻とみなせる事由により上場を廃止した企業とした(昨年度より期間を拡大した)。存続企業については、前年度の150社から大幅に増大させ、東証1部・2部に上場している全企業を対象とした。 成果2)について:財務データには多くの欠損値が含まれるが、会計項目間の関係を考慮して可能な限りの欠損値補完を行った。また、年度による会計基準の違いを調査し、可能な限りの補正を行った。 成果3)について:欠損値補完を施した財務諸表の任意の二項目を選択し、それらの比率を作成するが、単純な比率に留まらずに複数年度間の平均や差を用いた比率も生成している。これにより、財務指標の候補を大量に用意することができる。それらの候補の中からAdaBoostアルゴリズムを応用して、倒産企業と存続企業の判別に有効な財務指標の組み合わせを抽出している。倒産企業について上場廃止の直前期のデータを使用した場合(1年以内の倒産予知に対応)の識別精度がもっとも高いものの、上場廃止の1年前と2年前のデータを組み合わせることで(1~2年先の倒産予知に対応)、直前期のデータを使用した場合に匹敵する識別精度が得られた。 以上の研究成果について、3件の国内研究会・学会発表、1件の査読付き国際会議発表、1件の論文誌発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画においては、平成28年度までにAdaBoostアルゴリズムを応用して、1年以内の倒産予知に対する有効な財務指標選択および予測精度評価を行う予定であったが、既に29年度計画に含まれている早期予知にまで着手することができた。これらの状況から、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には、さらなる倒産予知精度の向上を目指す。考えられる方策としては、これまでに用いているAdaBoostアルゴリズムの改良を試みること、Random ForestやDeep Learningなどのその他のアルゴリズムを適用すること、財務比率のバリエーションを増やすこと、非財務情報の利用などが考えられる。また、粉飾決算の検出など他の財務分析のテーマに対して、本研究で提案した財務指標抽出手法を適用することも考える。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は生じているが3667円とわずかであり、これは計画的な使用の結果の残額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度における対外発表や物品購入に関わる支出にあてる計画である。
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Research Products
(5 results)