2016 Fiscal Year Research-status Report
合金基板の簡易な熱処理による自己形成金属ナノ触媒の開発とグルコースセンサへの応用
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15K21399
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Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
山際 清史 帝京科学大学, 生命環境学部, 講師 (20711443)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | グルコースセンサ / カーボンナノチューブ / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、汎用性に富む市販の合金素材表面に、穏和な熱処理により酸化物ナノ触媒層を自己形成させることで、既存の煩雑な各種触媒調製プロセスに比べて遥かに簡易な常圧触媒調製プロセスを提案し、特にその自己形成触媒の(i)電気化学的なグルコース酸化触媒能および(ii)カーボンナノチューブ合成触媒能を評価することを目的としている。(i)については、Mnを含む市販の各種基板を窒素またはアルゴン雰囲気下(低酸素雰囲気下)で熱処理することで表面にMn酸化物の選択的な析出が見られた。キャラクタリゼーションには主にX線光電子分光法を用いた。グルコース溶液を用いた電気化学測定では、優れたグルコース酸化触媒能および電気二重層容量を示すことが示された。(ii)については、市販のステンレス鋼を大気下で熱処理することで表面にFe酸化物(ナノ粒子)が選択的に析出することを見出した。キャラクタリゼーションには主にX線光電子分光法およびラマン分光法を用いた。基板種によっては、Fe酸化物の析出の他に、粒子の高分散性に寄与するバッファー層(成分)が同時に析出することが示唆されたが、申請者独自のカーボンナノチューブ合成法である液相一段合成プロセスに取り入れることで、より直線性の高い高配向・高純度多層カーボンナノチューブの合成が可能になりつつある。また、(i)、(ii)ともに合金素材は基板に限らず、メッシュやエキスパンドメタルといったより高表面積の素材の使用を試みており、センサ電極材料としてのさらなる高性能化を見据えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、各合金基板の基板種と熱処理条件の最適化を継続して行った。Mn含有基板を用いたグルコース酸化触媒の創製については、Mnを含む各種基板を、窒素またはアルゴン雰囲気下で熱処理し、それぞれの基板について、グルコース溶液中で電気化学的な酸化特性や電気二重層容量を評価した。また、溶液中における耐久性の評価も随時検討を進めている。ステンレス鋼を用いたカーボンナノチューブ合成触媒の調製については、熱処理によりFe酸化物ナノ粒子を表面に形成させることと同時に、バッファー層として機能する成分を析出させることにより、Feナノ粒子のさらなる微細化と粒径の制御を試みた。当該成分を含む基板種について熱処理を施し、実際にカーボンナノチューブ合成に使用して生成物を評価したところ、従来よりも直線性に優れる高配向カーボンナノチューブが得られ、基板表面の形態や触媒作用との関連性を調査している。熱処理基板表面のキャラクタリゼーションとしては電子顕微鏡による形態観察の他に、表面の詳しい組成や酸化状態についてX線回折測定、X線光電子分光法、ラマン分光法などにより解析し、析出機構の考察に繋げ、調製条件にフィードバックしている。
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Strategy for Future Research Activity |
Mn含有基板の熱処理によるグルコースセンサの創製に関しては、市販の酵素型センサに匹敵する応答速度、感度および市販型を上回る長期安定性(触媒寿命)を目指し、基板熱処理と電気化学的前処理の双方の最適化を進め、その上で実用化を見据えた種々の測定を行う。例えばMn含有基板から析出した自己形成触媒膜のグルコース検出の選択性を評価し、必要な場合は触媒の表面処理または表面を機能性高分子等で修飾し、性能の向上に繋げる。実験結果をまとめ、Mn酸化物のグルコース酸化のメカニズムを明確にし、そのモデルを提案する。 ステンレス鋼基板の熱処理によるカーボンナノチューブ合成触媒の調製に関しては、触媒層(およびバッファー層成分)の最適な析出条件等を検討し、それらの条件の最適化により得られた高配向・高純度の多層カーボンナノチューブに種々の方法によりMn酸化物ナノ粒子やその他の金属ナノ粒子を担持することで、その高表面積を活かしたセンサ向け電極材料の創製を試みる。上述のMn含有基板の熱処理によるグルコースセンサの場合と同様に、市販型センサに匹敵する性能を目指す。 また、研究を総括し、学術論文の発表や学会発表を積極的に行う予定である。
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Causes of Carryover |
実験試薬や合金素材等の消耗品の消費量が、当初の想定と比較して多少少量であったため、その分の差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度分として請求した助成金と合わせ、実験試薬等の消耗品および機器・備品の購入を計画している。
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