2015 Fiscal Year Research-status Report
足底圧分布パターンの定量化から発育に伴う歩行・走行動作の発達を評価する試み
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15K21417
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Research Institution | Nippon Sport Science University |
Principal Investigator |
柏木 悠 日本体育大学, 体育学部, 助教 (30738638)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 足底圧分布 / 足圧中心 / 歩行 / 走行 / トレーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
足底の圧力分布変化は,ヒトの動作の原因を探る情報として歩行・走行動作の評価に用いられている.地面反力ではなく,足底の圧力値を評価する理由には,素材など構造を変形または歪に関係し,ヒトの足底の感覚受容器は,圧力を「痛み」として感じられるため,病理歩行においてはその重要性はより高まる指標となる.スポーツでは,動きの巧みさに「スペーシング,グレーディング,タイミング」といった要素を,足底圧分布の色の変化による視覚的情報から動作の映像情報にはない力の地面への伝達、または力感を伝えることが可能となり,選手や指導の対象者にフィードバックする際に有効的な手段となる.本研究の目的は、発育発達に伴う歩行・走行動作中の足底圧分布データから幼児・児童の標準的な足底圧分布パターンを定量化し,歩行,走行動作を評価することを試みる.本年度は,足底圧分布パターンから動作を推定するための方法や,データの再現性,妥当性についての検討を行ってきた.特に歩行動作においては、評価軸を決定するために,「推進効率」を一つの評価指標として用いた.走行動作に特化したトレーニングを行っている陸上短距離選手と同年代の一般成人男性を歩行立脚期中の足底圧分布パターンと足圧中心軌跡の比較を行った.歩行立脚中は,4つのフェイズに区分し,各フェイズの絶対時間と相対時間を算出した.その結果,陸上短距離選手は,歩行立脚期中に前足部位の接地時間が明らかに長い時間を示し,更にこの時の足圧中心軌跡は,前足部位において,一般成人に比べて内側に位置していることがみられた.陸上短距離選手の足圧中心の前後速度は,一般成人より高い値を示し,より推進効率が優れていることが示された.歩行中の時空間パラメータには,両群には有意な差がみられないことから,陸上短距離選手は,身体合成重心位置と踵接地位置との前後距離を短くした歩行パターンであることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を遂行するための方法の確立や,再現性,妥当性の検討は十分に進んでおり,足底圧分布データから動作の推定を簡易的に行うこと可能である.この足底圧分布データから動きの推定に関して更なる検討が必要であるが,現時点においては,十分な成果を得られている。幼児,児童の計測に関しては,既に第1次時測定を男女園児60名を対象に終えており,更に,発育発達の影響を検討するために縦断的測定の調整も既に協力が得られている.現在はそのデータの分析段階である.今後,データ数を増やしていく予定であり,更に協力の得られる幼稚園,小学校とスケジュールを調整している.今後のデータ数を増やすことによって,発育発達に伴う足底圧分布パターンの定量化から幼児・児童の歩行,走行動作の評価を行うデータベースの構築が期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究の課題は,幼児および児童のデータ数の蓄積を増やし,データベース化をしていくことが最大の課題となる.現在は,既に計測データ収集を終えている幼児のデータを分析している段階であるが,このデータに関して,非常に個人差,ばらつきが大きいことが足底圧分布データから定性的にみられている.成人では,足底の前後方向へ関係する圧変化の大きさから動作の推定に至ったが,幼児においては,足底の外側と内側の圧力変動が大きくことがみられるため,回内・外動作の検討を新たに取り入れる必要性がある.更に足部のアーチ機能の形成は6歳ぐらいに完成するがそれ以前の幼児においては,アーチ機能が有効的に機能ことが考えられ,これは,歩行・走行時の歩幅,歩隔などの基本パラメーターに影響することが大いに予想される.従って今後の取り組みとしては,足底圧分布データと幼児・児童の足部形状データの収集を同時に行っていく予定である.
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Causes of Carryover |
初年度は,研究活動がおおむね順調に進んでおり,研究費に関しても予定通りの使用ができたが,消耗品の購入などで差額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の研究費の繰り越し金に関しては,計測時に必要な消耗品(アルコール綿など)など少額な経費に充てる予定である.また,前年度の繰り越し金は今年度の研究費に大きな影響はないため,当初計画通りに,解析ソフトウエアの修正、依頼費用と研究成果を国内外の学会費用と論文投稿への費用として使用する予定である.
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