2017 Fiscal Year Research-status Report
「ひきこもり」経験者の「当事者」発信に関する社会学的研究
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15K21427
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
関水 徹平 立正大学, 社会福祉学部, 専任講師 (40547634)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ひきこもり / 当事者活動 / 能力主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
ひきこもる経験をした人たちが当事者としておこなういくつかの活動に参加し観察するとともに、ひきこもった経験を持つ方へのインタビュー調査をおこなった。そこから得られたデータおよび公刊されている当事者の手記等を手がかりに、当事者活動の意義と課題、および当事者の主観的観点を尊重した支援のあり方について検討した。 活動に関わる当事者の声にもとづいて、当事者活動の基盤に、「できなさ」(=周囲の期待に応えられないこと)を否定するのではなく、できない自分を自分のありようとして受け入れること、そしてそのような自分自身の、そして自分以外の人々の「できなさ」を尊重する、という姿勢があることを明らかにした。そのような、「できること」(=周囲の人びとの期待に応えうること)に価値を置く立場とは異なる立場を提示するところに、当事者活動の根本的な意義があると考えられる。 その一方で、当事者が「有能さ」や「優秀さ」を発揮し、周囲の要求に応えることへの期待(可能性への期待)を、支援者や家族は期待しがちであり、当事者自身も、そのような可能性への期待を自分自身に向けている。そうした期待を完全に拒絶することは、当事者の社会との関わりの選択肢を狭めることになるが、可能性への期待に当事者活動が傾斜することは、「できなさ」の尊重(不可能性への配慮)から外れることになる。このバランスを取ることが、当事者活動に課せられた課題である。(※「可能性への期待/不可能性への配慮」という表現は、「ひきこもり新聞」第1号掲載の当事者手記による。) 主たる研究成果は、2018年5月に刊行予定の『福祉社会学研究』第15号に掲載される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インタビュー調査、参与観察等から得られたデータに基づいて、当事者活動の意義と課題を明らかにすることができた。ただし、ひきこもり経験者以外の当事者活動との比較という視点をさらに深める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
インタビュー調査の対象をより広げ、当事者活動がおこなわれる文脈をより一般的な水準でとらえることが課題である。延長期間で、さらに追加のインタビュー調査をおこないたい。
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Causes of Carryover |
追加で行うことになったインタビュー調査の日程の調整に手間取り、実施が年度をまたぐことになった。それに伴い調査謝金およびインタビューデータの文字起こし委託費の支出が次年度に持ちこされることとなったため。
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