2015 Fiscal Year Research-status Report
足圧中心-体性感覚バイオフィードバックの臨床応用とそのメカニズムの解明
Project/Area Number |
15K21446
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
安田 和弘 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (50633640)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脳卒中 / バイオフィードバック / 体性感覚 / 感覚代行 / 姿勢制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.体性感覚型バイオフィードバック(BF)による感覚補完効果の検証 本研究では,脳卒中片麻痺患者の立位姿勢制御に対して,体性感覚型BF装置の与える影響を感覚補完効果に焦点を当てて検証した.17名の脳卒中片麻痺患者を2群に分類し,立位姿勢課題でBF有無による効果を検証した.BFによる感覚補完効果を検証するために,患者は体性感覚を不正確にする条件(ラバーフォームマット上の立位条件)にて立位保持した.実験の結果,BF装着群は非装着群と比べて介入前後において有意に安定性が向上した.また,この傾向は左右方向の身体動揺において顕著であることがわかった.各群における介入前の姿勢制御能力に有意差は認めなかった.これらの結果から,BF装着した脳卒中患者は体性感覚が変化した状況において,有効にバランス能力を改善させ,それは片麻痺患者特有の左右動揺を低減させることが分かった.実験参加者は,各群とも同様のバランス課題を実施していたことより,BFによる感覚付与が効果へ影響している可能性が示唆された. 2.荷重移動システムの構築に関する予備的研究 本研究では,脳卒中片麻痺患者の過剰努力や不安感を低減しつつ,体性感覚型BFを用いて荷重移動を遂行するための機構を案出した.12名の若年健常者を対象として,荷重移動課題中(60%荷重量・80%荷重量)における丁度可知差異(荷重変化が知覚できる最小値)を実験的に算出した.この値を用いて,左片麻痺患者に対してシステムを適応した結果,患者は反復荷重移動課題中に荷重量の増加を認識できなかった.不安感スケールでは,施行前に中程度であったが介入中は不安感が生じなかった.また,麻痺側荷重量(Kg)は介入前後で統計的に有意に向上した.以上の結果から,少なくとも本症例においては,非明示的な荷重誘導を認識するに至らず,これにより不安感が低減され,さらに荷重量の増加を導くに至った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳卒中片麻痺患者を直接対象として,実証研究を遂行した.さらに不安を誘発しない荷重誘導手法の案出に着手した.本研究からバランス課題中の人工的な体性感覚BF付与が立位安定性を向上することが可能であること,さらに,脳卒中片麻痺患者の不安/緊張低減等を目的とした非明示的荷重誘導システムが,左片麻痺患者一例において,不安情動の低減および非明示的に加重可能であることを示した.これらの結果から,視覚依存傾向の高い脳卒中片麻痺患者に対して,新しい体感型BFシステムを提供できる可能性を示した.
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Strategy for Future Research Activity |
27年度の実験から,体性感覚BFが脳卒中片麻痺患者のバランス障害に一部有効であることを示した.この結果を受けて,特に問題となる荷重移動課題において,システム構築及び臨床試験へと展開する.また,健常者を対象として前庭感覚に外乱刺激を加えた際のBFによる感覚代行効果を明らかにすることで,多感覚統合に与える影響について議論する.
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Causes of Carryover |
物品費を計上金額よりも低価格で購入したこと,人件費について患者ボランティアの活用ができたため計上していた予算との差異が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度実施している実験に加えて,感覚代行効果との関連について,必要に応じ追加実験を実施する.その追加実験に関連する機器購入費および謝金として使用予定である.
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Research Products
(14 results)