2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K21460
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Research Institution | Toin University of Yokohama |
Principal Investigator |
石河 睦生 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 講師 (90451864)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超音波トランスデューサ / 圧電結晶膜 / 配向制御 / 高周波 / 広帯域 |
Outline of Annual Research Achievements |
水熱合成法を用いて圧電単結晶膜(PbTiO3,KNbO3)を製膜し、PbTiO3及びKNbO3を用いた超音波トランスデューサを製作し水中にて超音波送受信特性評価を行った。 試作した治具を用いてPbTiO3単結晶膜の共振-反共振周波数をスペクトラムアナライザー及びインピーダスアナライザを用いて電気的特性の測定を行った。測定用に用意した2μmのPbTiO3単結晶膜は共振周波数が950MHzであることが分かった。また比誘電率は約2000(1kHz)であることが分かった。この結果から、本手法による圧電単結晶膜の薄膜を用いて、圧電縦効果による厚み振動モードの共振周波数の高周波化が可能であることを初めて明らかにした。また、本研究で試作した治具および制御回路は、圧電単結晶膜の共振-反共振周波数および比誘電率の測定が可能であることが分かった。 本手法によるサンプルを複数用意し、圧電結晶膜の音速と共振周波数の関係を実験的に求めた。結果は、共振周波数について、実験値と計算値は一致する結果となった。また、水中においてPbTiO3及びKNbO3超音波トランスデューサの超音波送受信実験を行った。水中内にて、パルサーに接続された試作超音波トランスデューサから超音波を送信し、ガラスで反射した超音波を試作超音波トランスデュサーで受信し、その受信信号をプリアンプで増幅し、オシロスコープで表示することで超音波送受信特性の評価を行った。2μmのPbTiO3単結晶膜を用いた超音波トランスデューサの比帯域幅は120%以上となり、超広帯域特性を有することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
圧電結晶膜の製膜には基板を用いるが、圧電結晶膜が製膜された状態のまま超音波トランスデューサを試作すると、超音波送受信時に基板内に残響が発生し超音波トランスデューサとしての性能を著しく低下させる。基板には単結晶を用いているため、それは顕著に表れる。そこで、基板上から圧電結晶膜を剥離させる必要があるが、高周波用の圧電結晶膜は数ミクロンと薄いため、剥離が困難である。 剥離実験では物理的、化学的プロセスを検討してきたが、再現性の高い剥離方法の確立には至っていない。現在は機械的応力(超音波洗浄機によるキャビテーション)を用いた手法によるため、歩留まりに問題を抱えている。本手法による圧電単結晶膜を用いた超音波トランスデューサ1本の特性は高周波広帯域高感度であり、高分解能な超音波プローブ用のデバイスとして大変優れていることが分かった。しかし、本研究の目的である超高分解能超音波プローブの試作には、ある程度、歩留まり高く大量な超音波トランスデューサの試作が必須となるため、現在は圧電結晶膜-基板の剥離プロセスについて検討を行っている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
超高分解能超音波プローブを試作するために、現在行っている圧電結晶膜-基板剥離のプロセス条件についてまとめる。また、超音波プローブ用に超音波トランスデューサを配列させるために、圧電結晶膜上に形成するアレイ状の電極パターニングについても検討を行う。 パターニングの形成には、簡易に様々な超高周波超音波トランスデューサが試作できるよう、インクジェットプリンティング技術による導電性接着材の塗布による電極形成を試みる。その際に圧電単結晶膜上に導電性接着剤塗布の条件出しを行う。 電極パターンの設計と超高周波超音波トランスデューサを試作し、電気的特性の評価を行うことで、周波数特性と感度に関する条件出しを行う。その際、電極は超音波送受信用に、水-圧電単結晶間の超音波伝搬のマッチング層とうなるよう設計を行う。なお、超音波プローブの設計には、Masonの等価回路を用いる。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、超音波プローブを試作した後に超音波測定用の実験セットアップを構築し、設計値と超音波送受信特性の評価を行う予定であった。しかし、超音波プローブに用いる超音波デバイスについて、本手法を用いて試作したものは、超音波送受信特性は単体では非常に優れたものであったが、歩留まりに問題があった。 超音波プローブとしての評価に入るためには、解決するべき問題であり、現在はプロセスの改良に研究の主軸を置き実験を行ってきた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、新たに提案する手法により試作した超音波トランスデューサを用いて超音波プローブを試作し、超音波送受信の測定実験により、設計値と特性値の評価を行う予定である。 100MHzを超える周波数での超音波送受信実験のセットアップ用に、中古の高周波用のパワーアンプおよびプリアンプ、測定用治具等の購入を計画している。
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