2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K21475
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Research Institution | Gihu University of Medical Science |
Principal Investigator |
三嶋 智之 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 准教授 (00434522)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ピロロキノリンキノン / 吸収 / 抗酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は酵素法によるピロロキノリンキノン (pyrroloquinoline quinone; PQQ) の測定および腸管細胞における吸収実験を行った。また、PQQの持つ還元性による抗酸化作用について調べた。 鶏卵(卵黄・卵白)、牛乳、緑茶葉などについてPQQ含量を測定した。PQQの測定についてはアポ化したPQQ依存性 glucose dehydrogenaseによるリサイクルアッセイを用いた。この方法にはIPQ (imidazopyrroloquinolin)が測定できないといった問題があるものの、食品中の含量については他の文献に示された値と近い値を示したことから、補酵素型のPQQについては生体サンプルに関しても測定できると考えられた。そこでPQQの体内動態を調べるうえで重要な情報となる、腸管からのPQQの吸収についてCaco2細胞を用いて調べることした。まず96 well plateに分化させたCaco2細胞にPQQを含む培地を添加して、WST-1法により細胞数を計測し、細胞の生存率への影響を調べた。その結果、1 mM以上の高濃度ではその生存量が低下したため、影響のないと考えられる低濃度で吸収実験を行うこととした。CaCO2細胞にPQQを含む培地を加え、インキュベート後に外液を洗浄し、細胞を回収した。得られた細胞を破砕し、内液をPQQの測定の供した。その結果、細胞に添加したPQQの濃度の違いにより内液のPQQ濃度に差はみられなかった。これには内液のPQQ濃度が酵素法による検出限界を十分に上回っていない可能性が推測された。 一方で、PQQにはSOD様活性がみられるとともに、酸化剤としてNaClOおよびH2O2に曝したCaco細胞にPQQを添加すると細胞の生存率が高まったことから、PQQは一部の活性酸素種に対して抗酸化作用を有すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではPQQを添加した培地を分化したCaco2細胞に添加することにより、細胞内に取り込まれたPQQ量を測定することで、PQQの吸収メカニズムの一端を調べることを目的とした。本研究で採用した酵素法によるPQQの測定については概ね問題ないものの、この酵素法では細胞内のPQQ量を測定する際、十分な濃度でないため、正確な値が得られていない可能性が考えられた。これはPQQを高濃度で添加すると細胞の生存率が低下したため、細胞の状態を維持することが困難であることから、低濃度での実験を行ったことに起因すると考えられる。また、ラット小腸の反転サックを用いた吸収実験を予定していたが、使用予定の動物飼育施設の一部故障、修理のため、使用を断念した。
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Strategy for Future Research Activity |
PQQの測定において、PQQの酵素法による測定限界を下回っていた可能性があることから、今後は24 well plateにて細胞を培養することで測定の対象となる細胞量を増やすこと、PQQの暴露時間をさらに延長すること、またtranswell plateを用いることで、同様に細胞を用いた吸収実験を行うこととする。さらに並行してPQQが有すると推測される脂質代謝亢進への影響を調べることとする。具体的には牛脂をラット飼料に添加した高脂肪食 (30%) を投与したラットに対して、PQQ溶液を飲料水として自由摂取させ、3週間の飼育をする。飼育後、解剖し、採血および臓器を採取し、種々の測定に供する。特に血中の中性脂肪やコレステロールを測定するとともに、肝臓の組織切片に対して脂肪染色を行い、脂肪の蓄積について調べることとする。
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Causes of Carryover |
細胞を用いた吸収実験において、PQQが細胞の生存率を下げるという結果が認められたため、当初の研究計画の通りでは、正確な測定ができないと予想された。そのため、PQQの試験濃度を変更したところ、酵素法による測定範囲に対して適切な濃度とならなかった。そのため研究を次の段階に進めることができず、研究の進行に遅れが生じ、購入予定の実験に必要な複数の消耗品を購入していない。また、ラットの組織を用いた実験についても予定していたが、使用予定の学外の動物飼育施設が一部故障、修理を必要としたため、使用を断念したことから動物実験に関わる物品の購入をしていないことも理由に挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に予定を変更しつつ研究を進めるため、各種消耗品を購入予定である。また動物飼育施設に関しては新たに学内に新施設が建設されたことから、こちらの施設の使用が可能になった時期から、動物の飼育を行う予定である。
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