2016 Fiscal Year Research-status Report
初期発生胚をモデルとした細胞内膜ダイナミクスによるシグナル伝達制御機構の解明
Project/Area Number |
15K21494
|
Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
川村 暢幸 同志社女子大学, 薬学部, 助教 (30411086)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 初期胚発生 / エンドサイトーシス / ミクロオートファジー / シグナル伝達 / 膜動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類初期胚では、様々なシグナルによりダイナミックに細胞分化・器官形成が行われている。また、胎盤が形成される以前の時期において、臓側内胚葉(Visceral endoderm)とよばれる細胞グループでは極めて活発にエンドサイトーシスが起きており、活発な膜動態が観察され、我々は臓側内胚葉で特にミクロオートファジーというユニークな膜動態が起こっていることを報告した。エンドサイトーシス経路は、特に初期エンドソームが細胞内メディエーターにシグナルを伝える場として重要であることが指摘されている。本研究では、哺乳類初期胚を用いてエンドサイトーシス経路の膜動態(特にミクロオートファジーに着目して)によるシグナル伝達制御の役割の解明を目指している。 今年度は、rab7遺伝子欠損マウスについて、形態形成に関与するシグナル伝達関連遺伝子の発現解析を行った。前年度までに、in situ hybridization法により、形態形成シグナルであるlefty-1やcerlといった遺伝子についてその発現解析を行い、発現量や発言領域に差が見られることを確認していたが、今年度は、それら因子のさらに上流の制御因子等について、発現解析を行った。VPS16遺伝子欠損マウスについては、受精後6日より前の段階で胎生致死となることが明らかとなり別に解析を行っているVPS18遺伝子欠損マウスの示す表現型とほぼ同様の表現型を示すことが明らかになった。この結果は、VPS16とVPS18がclass cに属するVPSタンパク質でありどちらもHOPS複合体、CORVET複合体を形成する因子であることから充分納得のできる結果と言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
rab7遺伝子欠損マウス胚の解析において、今年度に予定した解析についてはおおむね終了できた。特に、rab7遺伝子欠損マウス胚において、Wnt経路とNodal経路のシグナル伝達に異常が生じていることを明らかにできた。この結果は、HOPS複合体を形成する膜動態制御因子であるVPS41遺伝子欠損マウスで得られた結果とは異なっており、胚形成期の多様なシグナルを制御するメカニズムと遺伝子の存在を示唆している。 膜ダイナミクス調節因子の遺伝子ノックアウトマウスの作出では、新たにVPS11遺伝子ノックアウトマウス作出のためのターゲティングコンストラクトの構築が終了した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度については、おおむね順調に進行したが、一部、遺伝子欠損マウスの繁殖状況等により進行に時間を要している為、平成29年度はマウス維持数の増量も考慮しつつ研究を行っていく。 rab7遺伝子欠損マウスについては、Wntシグナル伝達経路の異常が明らかとなってきたため、Wnt/beta-cateninの阻害剤等を用いた解析により、Wntシグナル伝達とrab7遺伝子の関連について明らかにしていきたい。 VPS16遺伝子欠損マウス表現型については、引き続き、胚仔に対して、初期/後期エンドソーム、リソソーム、頂端液胞等のマーカータンパク質について免疫染色を行い、細胞内膜動態に異常が生じているか明らかにしていくが、受精後6日以前に胎生致死となる表現型であるため、胚仔の摘出等の作業に困難が予想される。 VPS11遺伝子については、今後、ノックアウトマウス系統の樹立に向けて作業を開始する予定である。
|
Causes of Carryover |
今年度は、試薬、抗体等において、前年度までに購入したストックを使用することができたため、物品購入費用が抑えられたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、各遺伝子欠損マウスの繁殖、作出に伴い、遺伝子型判定を要する個体の増加が見込まれるため、それらの試薬に充当する。また、順調にいけば、ノックアウトマウス系統の作出を業者に委託することを考えており、その経費に充当する。
|
Research Products
(4 results)