2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K21501
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松葉 涼子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, プロジェクト研究員 (90555591)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 北斎 / 和本 / 江戸 / 浮世絵 / データベース / 版本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度より、大英博物館・ロンドン大学SOASの北斎研究プロジェクトと共同で、北斎版本の序文を読む研究会を実施している。北斎版本の序文から、北斎の文化圏、出版の背景を読み解くことを目的としており、また海外の研究者と協力して序文の文章を英訳することもあわせて実施している。今年度は『富嶽百景』の初編の序文からスタートしており、今後は北斎絵本の序文を中心に今後定期的に講読をすすめていく。研究会での成果を公開するために、立命館大学アート・リサーチセンターと共同でセンターの語彙索引検索システムを利用しながら、序文の翻刻、語釈、用例、現代語訳と和訳とが同時に検索、閲覧できるシステムを構築している。以上のシステムは版本カタログレゾネの画像閲覧システムとリンクさせ、画像とテキストデータベースの相互リンクができるようになる。
また、大英博物館リサーチスペースとのセマンティックweb構築のプロジェクトに参加し、北斎一枚摺の整理をすすめた。今年度具体的に版本のデータベースがセマンティックwebでどのように利用できるかという点まで議論は至らなかったが、最初の試みとして北斎一枚摺のデータベース活用の方法をみていきながら、今後版本のデータにどのように応用できるかを模索している段階である。特に、問題となるのは版本のエディション(版)の違いをどのように整理するかということであり、大量にある北斎版本のそれぞれの版の違いを効率よく比較し、順序をつけていくためにデジタル技術がどのように利用できるかを次年度特に集中してすすめていくように計画している。
他、ロイヤルオンタリオ美術館での北斎版本、一枚摺の調査、オランダ個人コレクション、ライデン民俗博物館での調査をすすめ、デジタル撮影を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北斎版本のデジタル撮影で画像資料を蓄積するという点においては、立命館大学アート・リサーチセンター、大英博物館およびメトロポリタン博物館など各主要な所蔵機関の協力を得ることができ、また研究資金にてデジタル撮影を実施しており、着実にデジタル資料を蓄積することができているといえよう。反面で、代表者が海外にいるということもあり、日本国内の調査をあまりすすめることができていない。今後、立命館大学と協力して、日本の版本画像資料の蓄積について再計画することが必要になっている。 また、序文など版本にあるテキストデータのデータベースとリンクさせるという点においては、当該研究の申請時にはその計画はなかったため、新たに計画内容を見直す必要があった。特に、講読、英訳は国内外の研究者と共同ですすめていく必要がある。大英博物館、ロンドン大学の研究プロジェクトとの共同で、日本とイギリスとで研究会を発足させることができたことで、研究内容をさらに充実させることができる、と期待している。 前述したが、今後の課題は版本の画像を比較できるシステムを構築していくことである。一年目、二年目ではシステムの構築までは至らなかった。三年目の次年度は特にその課題を集中的に行う必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
三年目、四年目は、現在までに蓄積してきた情報の公開方法、条件を確立させる。版本にみられる複数の頁をデジタル画像でどのように比較できるか、さらに出版元との関係もあって、版の操作が他の一枚摺などより複雑になっている。システムの構築だけでなく、それぞれの版の違いを説明するためのボキャブラリーを統一していく作業も必要になっている。 その方法論には、現在大学博物館ですすめているロジャー・キーズ氏、ピーター・モース氏の北斎一枚摺カタログレゾネの研究内容の整理が非常に役に立つ。一枚摺にみられる、それぞれの版の違い、出版元の変更などの情報を加えながら、出版順序をつけていく作業を特にキーズ氏が中心となって纏められた。版の違いを細かく説明ための大変纏まった研究成果になっており、浮世絵だけでなく出版文化を考える上での貴重な資料になっている。ただし、キーズ氏自身にも語彙のばらつきがみられるため、同じ現象でありながら異なる表現がされている箇所もある。キーズ氏の作業内容を整理しながら、具体例を検討し、ばらつきのある語彙を整理していくことで、版の違いを説明するための基準ができていく。大英博物館ですすめている、キーズ・モース氏の版本一枚摺カタログレゾネの作業に加わりながら、日本語、英語での整理の手順、解説語彙の統一化をすすめ、版本画像データベースに応用させることを目指す。 さらに、画像の比較検討には、ジョン・レーシグ氏が浮世絵一枚摺の画像をつかって公開している画像マッチングシステムの導入を検討したい。レーシグ氏には協力いただくことに了解を得ているが、具体的な相談を早急にすすめる必要がある。2017年度のはじめには具体的なミーティングをし、版本カタログレゾネのシステムの具体的なスコープを完成させる。
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Causes of Carryover |
前年度までに撮影機材を入手し、物品購入をする必要がなかったために執行金額が少し減っている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の版本カタログレゾネ構築のため設営費、人件費に充当する。
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Research Products
(4 results)