2015 Fiscal Year Research-status Report
牽引療法には従来の強い牽引力が必要か?-歩行改善に有効な優しい牽引治療の開発-
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15K21509
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Research Institution | Takarazuka University of Medical and Health Care |
Principal Investigator |
中川 達雄 宝塚医療大学, 保健医療学部, 講師 (10587512)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 股関節 / 歩行 / 牽引療法 / 股関節可動域 / 股関節マイクロ牽引 |
Outline of Annual Research Achievements |
患者の股関節に対して1kg程度の微小牽引を加える安全な牽引治療であるマイクロ牽引法が身体に与える影響を検証し、その有用性を明らかにしてきた。H27年度は、申請者の先行研究である「股関節マイクロ牽引法が関節可動域に及ぼす影響-1kg牽引,5kg牽引,10kg牽引での比較検討-」の成果を発展させ、牽引装置を用い、対照条件、低牽引条件(1kg牽引)、高牽引条件(10kg牽引)の3条件に分けて定量的に股関節を牽引し、牽引強度の違いが歩行動作に与える影響を検証している。目的は、歩行動作の改善に効果的な牽引強度の特定と、その牽引強度による歩行動作の影響の特徴を解析することである。今現在、低牽引条件(1kg牽引)による歩行動作の改善は、股関節可動域が影響している傾向が得られている。医療機関では一般的に5kg~30kgの重量で牽引治療が行われており、患者にとっては牽引力が強く、苦痛や牽引後に違和感を感じるものが多い。医療者側は牽引治療に明確な基準がないため、患者の違和感を指標に牽引力の調整が行われている。高齢者は感覚的なフィードバックが弱く、より安全な牽引治療が社会的に望まれている。本研究を通して、この安全な牽引治療が歩行動作に効果的であると検証されれば、今後増加する高齢者や刺激に敏感な患者に対して安全に用いることができ、医療の現場で重要である「最小の力で、最大の効果を上げる」理想的な治療法であると考えることができる。 よって、この治療法が普及すれば、高齢者にも負担なく用いることができ、自立歩行動作を改善、もしくは機能を維持することに寄与できる。その結果、転倒のリスクを回避し、QOLの向上に大きく貢献できる。また安全でかつ、効果的に関節可動域を改善させることから、医療機関以外に、スポーツ現場や日常の健康ケアとして用いることができるよう、その汎用性を高める研究への展開も計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、歩行動作の改善に効果的な牽引強度の特定と、その牽引強度による影響の特徴を解析した。具体的には牽引装置を用いて対照条件、低牽引条件(1kg牽引)、高牽引条件(10kg牽引)の3条件に分けて定量的に股関節を牽引し、牽引強度の違いが歩行動作に与える影響を検証した。このプロトコルは、現在も研究遂行中である。今現在、低牽引条件(1kg牽引)による歩行動作の改善は、股関節可動域が影響している傾向が得られている。また歩行動作測定の精度を上げるために、測定カメラの増設を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
対照条件、低牽引条件(1kg牽引)、高牽引条件(10kg牽引)の3条件に分けて定量的に股関節を牽引し、牽引強度の違いが歩行動作に与える影響を検証し、「歩行動作の改善に効果的な牽引強度の証明」する。また牽引強度による歩行動作の影響の特徴を解析する。今後も被験者を追加し、研究を遂行する。また歩行動作解析に用いる3次元リアルタイムモーション測定システムのカメラ4台を、H28年度には6台に増設し、測定の精度の充実を図る予定である。また次の研究課題である股関節牽引の効果的な牽引角度の検討では、「歩行動作の改善に効果的な、股関節牽引の牽引角度を証明」することを目的としている。この研究課題については、現在遂行中の効果的な牽引強度の検討が終わり次第、着手する予定である。よってこの2つの研究課題の検証結果から、歩行動作の改善に効果的な股関節牽引の「牽引強度」と「牽引角度」を証明し、歩行能力を向上させる安全で効果的な牽引治療法として提唱できる。そして今後、高齢社会が進み、より安全な牽引治療が社会的に望まれている中、この研究により、牽引治療には強い牽引強度が必要という概念をくつがえす可能性がある。
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