2015 Fiscal Year Research-status Report
水環境中のインフルエンザウイルスおよび抗インフルエンザウイルス薬の網羅的探索
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15K21513
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
高浪 龍平 大阪産業大学, 工学部, その他 (00440933)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インフルエンザ / ウイルス / 抗ウイルス薬 / タミフル / リレンザ / イナビル / ラピアクタ / 耐性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インフルエンザ流行時に水環境中に放出されている抗インフルエンザウイルス薬に着目し、耐性ウイルスの探索を同時に行うことで、水環境中のインフルエンザウイルスの消長および抗インフルエンザウイルスの動態について知見を得ることを目的としている。平成27年度においては以下の成果が得られた。 1、リアルタイムPCRによるウイルスおよび耐性遺伝子の高感度測定法の確立 水環境中における対象ウイルスおよび遺伝子はごくわずかに存在していることから、これらの濃縮を行う必要がある。数種の濃縮可能な方法について検討を行った結果、「陰電荷膜法」を採用した。本方法による水道水を用いた添加回収試験において、8倍程度の濃縮が可能であった。インフルエンザウイルスはノロウイルスやアデノウイルスに比べウイルスが壊れやすく、8倍に濃縮できたことは十分な成果であるといえる。 2、新薬を含む抗インフルエンザウイルス薬の一斉分析方法の確立 先行研究において確立しているタミフルおよびリレンザの分析方法(代謝物質を含む3物質)に、新薬であるイナビルおよびラピアクタを加えた代謝物質を含む6物質の一斉分析方法を確立した。対象となる物質はウイルスと同様に環境中濃度がごくわずかなため、固相抽出法による濃縮の最適化を行った。これにより100倍の濃縮が可能となり、バックフラッシュによる溶出を採用することで高い回収率が得られた。河川水を用いた添加回収試験の結果、回収率が61%から98%の間となり、十分な測定が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は平成27年度から平成30年度を期間とする研究であり、平成27年度は初年度である。平成27年度における研究目標である、①リアルタイムPCRによるウイルスおよび耐性遺伝子の高感度測定法の確立、および②新薬を含む抗インフルエンザウイルス薬の一斉分析方法の確立、のそれぞれについて十分な成果が得られたため、進捗状況として「おおむね順調に進展している」と判断した。 また、平成27年度インフルエンザシーズンにおいて、下水処理場放流水および河川水を定期的に採取した。それらに含まれる抗インフルエンザウイルス薬を測定しており、現在測定結果を解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度より水環境中のインフルエンザウイルスおよび抗インフルエンザウイルス薬のモニタリングを開始するが、測定法の開発時に検討を行った水道水および河川水よりも夾雑物質を多く含む試料を対象とするため、下水試料等の夾雑物質の多い試料を用いた添加回収試験を実施し、測定方法について検証する。本検証をインフルエンザシーズンまでに完了し、インフルエンザシーズンにおける実試料測定に備える。
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Causes of Carryover |
平成27年度の研究目標である、新薬を含む抗インフルエンザウイルス薬の一斉分析方法の確立において予定よりも早期に十分な結果が得られたため、関連試薬の購入が節約され残額が生じた。次年度以降の検討を十分に行うことで研究費を計画的に執行できると考える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度以降において、十分な研究を実施する計画のため、物品購入を予定よりも多く執行する計画である。これにより、平成28年度以降の次年度使用額を低減できる予定である。
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