2016 Fiscal Year Research-status Report
水環境中のインフルエンザウイルスおよび抗インフルエンザウイルス薬の網羅的探索
Project/Area Number |
15K21513
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
高浪 龍平 大阪産業大学, 人間環境学部, 講師 (00440933)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インフルエンザ / ウイルス / タミフル / リレンザ / イナビル / ラピアクタ / 下水処理 / モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インフルエンザ流行時に水環境中より検出されている抗インフルエンザウイルス薬に着目し、耐性ウイルスの探索を同時に行うことで、水環境中のインフルエンザウイルスの消長および抗インフルエンザウイルスの動態について知見を得ることを目的としており、平成28年度においては以下の成果が得られた。 1、高感度測定法を用いたインフルエンザウイルスの探索 確立したウイルスの高感度測定法を用いたインフルエンザウイルスの探索を実施した。平成28年度は下水処理施設を対象とし、流入下水および放流水を対象に実施した。インフルエンザ流行時の各試料を用いて測定を行ったが、インフルエンザウイルスは検出されなかった。そこで、濃縮方法を「陰電荷膜法」から「糖鎖固定化ナノ粒子を用いる捕捉濃縮精製法」に変更して再度測定を行ったが、インフルエンザウイルスは検出されなかった。よって下水処理施設内におけるインフルエンザウイルスは、インフルエンザ流行時においてもごく微量であると考えられる。なお、今回の測定において実施した「糖鎖固定化ナノ粒子を用いる捕捉濃縮精製法」は「陰電荷膜法」に比べ、約14倍の濃縮効率が得られた。 2、モニタリングによる水環境中動態の解明 河川水中の抗インフルエンザウイルス薬の動態について知見を得るために、継続的なモニタリングを実施している。供給割合が高い、または服用する用量が多いタミフルおよびリレンザについては、例年インフルエンザ流行時に検出されている。平成28年度においては平成27年度に比べインフルエンザの流行が大きくなかったため、これらの河川水中濃度も平成27年度に比べ低く検出されたが、インフルエンザ流行に数週間遅れて、河川水中の濃度も同様の時間的変動を示すことから、これらがヒト由来であり、環境への負荷がインフルエンザの流行と密接に関係していることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は平成27年度から平成30年度を期間とする研究であり、平成28年度は2年目となる。平成28年度は前年度に確立した①インフルエンザウイルスの高感度測定法、および②抗インフルエンザウイルス薬の一斉分析方法を用いた網羅的探索を研究目標としている。 平成28年度のインフルエンザ流行時において、①下水処理施設内のインフルエンザウイルスの探索、および②河川水中の抗インフルエンザウイルス薬のモニタリングを実施し、それぞれについて、「研究実績の概要」で述べたように十分な成果が得られたため、進捗状況として「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、これまでに確立した測定方法を用いて、さらなるインフルエンザウイルスの探索および抗インフルエンザウイルス薬のモニタリングを実施する。これらの網羅的探索として、畜産排水等に対象を広げる計画である。しかし、畜産排水等の夾雑物質の多い試料を対象とした場合に、十分な測定が可能であるかについて検討を行う必要があるため、測定方法については試料の状況に応じて都度検討を行うこととする。
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Causes of Carryover |
平成28年度の研究において年度末に試薬の購入を予定していたが、順調に研究が進み購入が不要となったため残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降の使用計画を十分に検討することにより、計画的に執行できると考える。
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