2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K21520
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
福島 宏器 関西大学, 社会学部, 准教授 (50611331)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 内受容感覚 / 感情 / 呼吸 / 心拍 / 心身相関 / 認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,身体の生理活動がリアルタイムで我々の認知に与える影響を明らかにするために,息を吸う・吐くという呼吸の位相と,心拍の拡張期・収縮期の位相が,自己・他者の感情の認識や印象に与える影響を検討するものである. H28年度は,ドイツ・ウルム大学との共同研究を進め,呼吸と心拍の位相が表情認知に与える影響を精査する実験を行ない,分析をほぼ終えた.主に以下の2つの知見を得た. <心拍と呼吸の位相が中性表情の感情価判断に及ぼす影響> 刺激が提示された瞬間の心拍および呼吸の位相が,ニュートラル表情刺激の感情価判断に及ぼす影響を検討した.実験の結果,感情価の判断は,提示される画像タイミングが心拍・呼吸周期のどの相にあたるかによって,影響を受けることが示唆された.具体的には,心拍位相については,拡張期と比べて収縮期に提示された刺激に対する感情価がより明確になっていた.また呼吸周期については,呼気の途中に刺激が提示された場合に,他の相に比べて,ポジティブな感情価の評価が強くなる傾向が示唆された.さらに,このようなパターンには,内受容感覚の個人差との正の相関が観測された. <呼吸性脳波変動:基本動態および個人差の検討> 呼吸と認知のリアルタイムの連動について,神経活動レベルでのメカニズムを理解するために,呼吸の吸気・呼気のサイクルに連動して脳波の各周波数帯のパワーがどのように変動するか,その変動の個人差がどのような機能と関連するか,という2点を検討した。その結果,呼吸に合わせた脳波振幅の変動パターンを記述するとともに,とくに高周波γ帯域パワーの呼吸性変動量には,個人の呼吸性心拍数変動の強さや,呼吸性内受容感覚の正確さと負の相関が見られた. これらの知見は,内受容感覚が意識的な感情知覚に及ぼす影響とそのメカニズムに関して新たな知見と研究方法を提供するものといえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3点の研究項目のうち2つ「心拍・呼吸位相が感情認知に与える影響」および「心身相関の個人差要因」について,研究が大きく進展している.ドイツ・ウルム大学との国際共同研究によって上記の研究項目についての実験データを取得し,分析もほぼ終えている.また,当初の計画を超えた,脳活動と身体生理活動のリアルタイムの相互作用に関する研究も進められている. 一方で,データの発表と論文化がやや遅れている点に留意して「おおむね順調」という判断をしている.
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度には,残る研究項目である「対象の印象形成に心拍・呼吸位相が及ぼす影響」の検討を勧める.また,これまでに得られたデータの論文化を急ぎ,順次発表する.国際学会を含めた成果の学会発表の予定をしている.
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Causes of Carryover |
計上していたポリグラフ装置の購入が主な予算執行予定であった.しかし,H28年度は9割以上の期間,共同研究先のドイツ・ウルム大学に滞在し,同大学の設備を利用する必要が生じたために,予算執行計画を変更した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年に,心拍・呼吸・脳波測定装置,および,生理信号分析ソフトウェアの購入で,予算の大半を執行する.その他,実験参加者謝金,論文校閲・投稿料,出張旅費等に使用する.
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