2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K21524
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
近藤 直幸 関西医科大学, 医学部, 助教 (30570840)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 免疫学 / 一分子生物学 / 蛋白質化学 / 時空間制御 / 免疫シナプス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、平面脂質二重膜上に形成させた免疫シナプス(IS)上でのLFA-1とICAM-1相互作用の一分子測定をより長時間行う目的で、光安定性の極めて高い蛍光物質でICAM-1を標識し測定を行ったところ、最長3分以上の一分子イメージングに成功した。 この最適化された実験系を用いて、LFA-1/ICAM-1相互作用がIS上のどこで起こるかを精査したところ、結合時間の短い相互作用は、既知のLFA-1/ICAM-1のIS上での局在領域であるpSMAC領域全域に亘って起こるのに対し、3秒以上の結合時間の長い相互作用はpSMAC領域の中心部で特異的に起こることが明らかになった。LFA-1とICAM-1の結合時間と、LFA-1のコンフォメーション状態との密接な相関が既報であることを鑑みれば、短い結合時間のイベントはLFA-1低親和性型の寄与によるもの、長い結合時間のイベントはLFA-1高親和性型によることが示唆された。また、各イベントの軌跡の解析から個々の拡散係数を計算したところ、低親和性型は激しく揺ぐ傾向であるのに対し、高親和性型の動きは制限されていることが明らかになった。 次に、細胞内因子と蛍光蛋白質/HaloTagの融合蛋白質をT細胞内で発現させ、LFA-1/ICAM-1一分子結合イベントと細胞内因子との同時可視化を行ったところ、リンパ球の接着性を亢進する Rap1, Mst1, Kindlin-3がpSMACの中心部に集積し、高親和性LFA-1と共局在することが明らかになった。また、これらの因子をノックアウトしたマウスから単離した、もしくは、これらをノックダウンした初期培養T細胞を用いてIS/一分子解析を行ったところ、接着頻度の減少とpSMAC構造の減弱化に加えて、高親和性型LFA-1の割合が減少することが明らかになった。 以上から、Rap1/Mst1/Kindlin-3を含むシグナル伝達分子複合体のpSMAC領域中心部での局在により、LFA-1高親和性型の形成が促進され、その結果、pSMAC構造が形成されること明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光安定性の極めて高い蛍光標識物質の導入により、長時間測定が可能な安定した一分子測定実験系を最適化することが出来た。これにより当初計画していた、LFA-1/ICAM-1結合イベントの詳細な解析が容易になり、統計学的な解析を行うために十分な数のイベントを取得することが出来るようになった。 また、LFA-1関連遺伝子欠損マウスの作製と、それらから単離したT細胞を用いた一分子測定も順調に進んでおり、長期結合型/高親和性型LFA-1の形成にそれらが関与していることのみならず、pSMAC構造の形成自体に影響を及ぼすことを発見することが出来たため、研究目的の達成に近づいていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
長期結合型/高親和性LFA-1の減少が接着頻度の低下のみならず、pSMAC形成の破綻をもたらしたことは予想外ではあったが興味深い発見であると考えられる。今後は当初の目的を更に進展させるために、高親和性LFA-1が免疫シナプスの空間的な秩序形成にどのような因子を介して影響を及ぼしているかを、他の細胞内因子を可視化もしくは欠損/ノックダウンすることにより検討したいと考えている。 また、LFA-1自身の可視化に関しては未だ困難を伴うが、LFA-1の変異体やLFA-1を恒常的に高親和性型にする試薬などを導入し、本研究で確立した一分子LFA-1/ICAM-1結合時間測定系を利用して、LFA-1の親和性と結合時間のより詳細な相関関係を明らかにしていきたい。
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