2015 Fiscal Year Research-status Report
血漿遊離DNAを用いたEGFR-TKI耐性機序の解明と臨床的有用性検討
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15K21526
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
金田 裕靖 近畿大学, 医学部, 講師 (50351599)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | EGFR遺伝子変異陽性肺がん / EGFRチロシンキナーゼ阻害剤耐性 / バイオマーカー / 耐性克服 / Digital PCR |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの薬物療法において、分子生物学的特性に基づく新たな治療法として分子標的治療が開発される中、ゲノム解析技術の発展により分子標的薬の標的となる新たなdriver mutation の発見や遺伝子変異による薬剤耐性などが明らかになり、遺伝子異常に基づく個別化治療が進んでいる。 その中でも肺がんは、治療選択においてEGFR 遺伝子変異やEML4-ALK などの遺伝子異常を検索する事が必須となっている。また、EGFR 阻害剤に対する耐性機序においても多くの遺伝子異常が関与していることが明らかになっている。しかしながら、診断時や耐性時の生検検体が微量であり、かつ侵襲性を有することから、非侵襲的に採取可能な末梢血からの血漿・血清を用いた腫瘍由来のDNA の体細胞変異を検出する方法が模索されている。本研究は、degital PCR 法を用い、非侵襲的な血清中の腫瘍由来DNA からの体細胞遺伝子変異検出の実行可能性と血清検体のサロゲートマーカーとしての臨床的有用性を検討し、肺がんの実地臨床に貢献できることを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Digital PCRを用いた高感度体細胞遺伝子変異測定系の構築。EGFR遺伝子変異陽性肺がんにおける標準治療薬であるEGFR-TKIの耐性の原因として特徴的なEGFR (exon19とexon21), EGFR exon20 T790M, KRAS, BRAFの遺伝子変異とFGFR1の遺伝子増幅の異常について、プライマー設計とPCR条件を検討し、高感度アッセイによる測定系を構築した。 EGFR (exon19, exon21とexon20 T790M), KRAS, BRAFの遺伝子変異については、digital PCRによる検出をEGFR遺伝子変異陽性細胞株(H1975, PC-9, HCC827), KRAS遺伝子変異陽性細胞株 (A549, H460, HCT116), BRAF遺伝子変異陽性細胞株 (HT-29)を用いて確認した。これまで遺伝子増幅の測定は、Taqman法によるコピー数解析を行ってきたが、digital PCRによる測定系を構築した。FGFR1遺伝子増幅のある細胞株H520を用いて、FGFR1遺伝子増幅検出系を構築した。正常DNAでのコピー数を2とした場合のdigital PCRでの最小検出コピー数は、2.2であった。また、FGFR1遺伝子増幅のdigital PCRによる検出法とTaqman法との相関係数は0.994を示しており、digital PCR法によるFGFR1遺伝子増幅は十分にcomparableであることが示された。他の遺伝子増幅検出の測定法については、上記の手法を用いて他の遺伝子についても同様の検出が可能と考えらる。検出の有無は、各種の遺伝子変異を有する細胞株を用いて確認する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究については、平成27年度の研究計画と同様のことを行い、平成27-28年の2年間でdigital PCRによる測定系を構築する。 1)血清検体での測定:血清検体から抽出したcfDNAを用いてdigital PCRによる遺伝子変異測定を行う。検出された遺伝子変異は、ダイレクトシークエンス、TaqMan遺伝子変異検出法のいずれかの手法による確認を行う。各手法の検出感度は、ダイレクトシークエンスで約10%、TaqMan遺伝子変異検出法で0.1%であり、digital PCRによる遺伝子変異陽性検体の変異アレルの含有率に応じて選択する。 2)血清検体と腫瘍組織検体におけるそれぞれの遺伝子異常検出頻度の測定結果との比較検討:血清検体での遺伝子変異検出結果と腫瘍組織検体での検出結果を比較検討する。腫瘍組織検体での遺伝子変異検出結果をもとに、血清検体における検出成功率と一致率を算出し、血清検体での遺伝子変異検出の有用性について評価する。 3)遺伝子変異の有無による耐性機序の解明および治療効果との相関解析:血清検体での遺伝子変異検出結果と腫瘍組織検体での遺伝子変異検出結果に基づき、耐性機序の解明と治療効果との相関を検討する。EGFR-TKIによる無増悪生存期間等に関する情報が得られる場合には、予後との相関についても検討する。この解析を通して血清検体を用いたdigital PCRによる遺伝子変異検出の臨床的有用性を検討し、最終的に臨床試験において検証価値があるかを判断する。
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