2015 Fiscal Year Research-status Report
次世代が先人の知恵を継承する場面における世代間相互作用の実験的検討
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15K21530
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
田渕 恵 関西学院大学, 文学部, 受託研究員 (70631977)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 世代間相互作用 / 知恵 / 利他性 / 世代性 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】 本研究の目的は,高齢者が次世代のために,人生経験を基に知恵を伝承する場面において,受け手である次世代がどのような知恵を受け入れ,どのような世代間相互作用が起こるのかについて,実験的に検討することである。これまでの研究により,高齢者による知恵の伝承行動が,受け手の若者に受け入れられ感謝されなければ,高齢者と若者の両世代の心理的発達が停滞し,高齢者の知恵の継承行動が断絶し,世代間の隔たりを一層広げる悪循環が生まれる可能性を示してきた。そこで本研究では,互いに知恵を出し合って創造的な課題に取り組む際に起こる世代間相互作用と,次世代に対する利他性などの心理的変化を実験的に検討することを目的としている。 【研究計画の実施】 今年度は,高齢世代と若年世代を対象とした世代間相互作用の実験室実験を行った。実験には,両世代が知恵を出し合って取り組むことのできる積み木課題を用い,課題中の両世代の相互作用を捉えるため,映像データおよび音声データを用いて行動・会話分析を行った。また,高齢者の心理的変化を捉えるため,利他性および世代性に関する尺度を用いた。その結果,高齢者から若者に対する受容的な利他性が,世代間相互作用の中で発揮されていることが実験的に明らかになった。この成果について国内外の学会で発表を行い,また国内外における学術雑誌にも投稿を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究において計画していた実験室実験は,計画通り実施されている。実験対象者募集の際に,地域のシルバー人材センターや大学の卒業生等に協力を得ることが出来たため,当初の計画以上に積極的にデータを収集することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに実験対象者の年齢幅を広げ,知恵の授受場面における世代間相互作用の実態を明らかにするための実験を継続するとともに,1年目の成果としての学術論文をまとめ,海外の老年学や社会心理学の学術雑誌に投稿していく予定である。
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Causes of Carryover |
実験実施のための実験者募集や実験室を,アルバイトや業者に委託する計画であったが,大学内のネットワークおよび地域のシルバー人材センターに協力を得ることができたため,実験室や機材の借用費用が予定よりも小額で済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はさらに実験対象者を増やすため,実験実施やデータ解析のための補助としてアルバイトを依頼する計画を立てており,謝金や人件費として使用する予定である。
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