2016 Fiscal Year Research-status Report
がん低酸素領域を送達範囲内に収める難水溶性薬物搭載粒子径可変ナノキャリアの開発
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15K21534
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
鈴木 亮佑 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (80611540)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 薬物送達システム / ナノ粒子 / がん / フィトケミカル / 脂質-高分子複合ナノ粒子 / がん化学療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、粒子径可変ナノキャリアによる、腫瘍血管から遠距離の低酸素領域に及ぶ広範囲がん組織への効率的な難水溶性薬物の送達を目的とする。低酸素領域は治療抵抗性・浸潤能の高さ、がん幹細胞の存在により有用な標的化部位である。しかし、当該領域への効率的な送達に必要な粒子径を明らかとする必要がある。本研究採択までに、研究代表者は35-200 nmにおける任意粒子径への制御性・高い難水溶性蛍光分子封入率を有するコア-シェル型ナノキャリア、脂質-高分子複合ナノ粒子 (LPN)を開発している。 平成28年度は、当初前年度に実施する計画であった、マイクロリアクタを用いた単一・狭粒子径分布からなるLPN調製法の確立に取り組んだ。使用するマイクロリアクタの装置構成・水溶液およびアセトン溶液からなる2液の混合流路・流速・流速比を最適化することで、個数平均において30 nm以下の粒子径を達成した。この粒子径は高分子ミセルと同等かそれよりも小さく、世界最小クラスである。当該成果を得るために想定以上の期間を要したため、研究期間を平成29年度まで1年間延長して極小粒子径を得るために必要な条件の体系化や物理化学的性質の解析に取り組む。当初最終年度計画とした、担がんマウスにおいて粒子径が腫瘍蓄積量・漏出血管からの浸透距離・抗がん活性に及ぼす影響の評価は、上記検討が済み次第早急に行う。以上より、進捗状況としては遅れているものの、新たな極小粒子径ナノキャリアの可能性を見出したことを本概要総括とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成27年度に実施した疎水性フィトケミカルの選択およびその封入率向上だけでなく、平成28年度に実施したマイクロリアクタを用いた単一・狭粒子径分布からなるLPN調製法の確立においても想定以上の期間を要したことが理由である。平成28年度実施内容については、マイクロリアクタおよび生分解性高分子の両方を検討する必要があることを認識するまでに期間を要したために進捗が遅れを生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に進捗の遅れを生じさせた問題については既に解決し、世界最小クラスのナノキャリアとすることに成功している。当該年度は粒子径を限界まで小さく条件の探索に終始していたので、研究計画を平成30年度まで1年延長した上で下記2点について早急に実施する。
1. 物理化学的性質の解明: LPNを極小粒子径とするために必要なマイクロリアクタ構成、水溶液-アセトン溶液混合条件を体系的に明らかとする。また、リポソームにおけるPEG化脂質の自発的ミセル化を考慮し、当該事象の有無をLPNの蛍光標識およびサイズ排除クロマトグラフィによって評価する。上記評価方法に関する調査は既に完了している。
2. 担がんマウスモデルにおける評価: 脂質膜に蛍光標識したLPNを尾静脈より投与し、血中滞留性を評価する。血中における薬物保持性を評価するために、蛍光共鳴エネルギー移動を起こす2種類の蛍光分子を共封入したLPNを調製し、血中における蛍光挙動を測定する。抗がん活性の評価には疎水性フィトケミカル封入LPNを使用する。本項目に関しても必要な調査は既に完了している。
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Causes of Carryover |
当該年度内に購入が必要な消耗品はあったが、直接経費残額がそれに満たなかったため未使用分として繰り越されたことが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画の遂行にあたり、次年度使用額を十二分に考慮しつつ消耗品の購入に充てる。
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