2016 Fiscal Year Research-status Report
青年期ニコチン慢性曝露によるアルコール飲酒増加に対する分子機構と薬物治療薬の探索
Project/Area Number |
15K21542
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
黒川 和宏 国際医療福祉大学, 薬学部, 講師 (30454846)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ニコチン曝露 / アルコール摂取 / L 型カルシウムチャネル / 飲酒欲求 / 細胞内カルシウム動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、青年期におけるニコチン曝露が将来アルコール(EtOH)に対してどのような影響を与えるかを検討する目的とした。本検討では青年期においてニコチンの慢性処置を行いEtOH 誘発報酬効果形成および EtOH 自発摂取量におけるL-type voltage-dependent Ca2+ (Cav1) channels (L-type Cav1 channels)の関与について行動薬理学的観点から検討を行った。ニコチン処置動物は浸透圧ポンプを用い、ニコチンを慢性皮下投与することにより作製した。また、EtOH 誘発報酬効果は条件づけ場所嗜好性試験法ならびに EtOH の自発摂取量は2 bottle free choice 法により評価した。ニコチン処置動物を用いて、EtOHで条件付けを行うことにより有意な報酬効果の増強が認められた。この報酬効果の増強が L-type Cav1 channels を介しているか否かについて、L-type Cav1 channels 阻害薬である nifedipine を用いて検討したところ、EtOH による報酬効果は、nifedipine の脳室内投与により用量依存的かつ有意に抑制された。さらに、ニコチン慢性処置後動物における 8% EtOH の自発摂取量を測定したところ、対照群と比較して有意な EtOH の自発摂取量の増加が認められた。この EtOH の自発摂取量の増加は、nifedipine の前処置により有意に抑制された。以上のことから、青年期にニコチン曝露歴があると EtOH 誘発報酬効果の亢進ならびに EtOH 自発摂取の増加が認められること、さらにその増加機構に脳内の L-type Cav1 channels の活性化が重要な役割を果たしていること可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成28年4月から現在の所属へ異動となったため、研究環境の大幅な変更があった。本申請研究内容は、前任地にて以前から実施していた研究の発展的内容のために、新任地において実験環境の条件や設備を同等レベルの状態にセットアップする必要がある。また、平成28年度は新任地にての新しい業務を履行するために、多くの時間を要することとなった。これらの理由から、当初予定していた研究進度が遅くなっている。平成29年度は可能な限り、本申請研究を遂行していく所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)青年期のニコチン曝露がアルコール依存形成を促進させることならびに飲酒量を増加させる細胞内情報伝達機構を検討する。特に細胞内カルシウム動態機構を調節すると考えられているリン酸タンパク質(CaMKII、CaM等)の関与についてウエスタンブロット法に従いタンパク発現の検討を行う。2)アルコールの依存形成ならびに飲酒量を増加させる脳部位の特定を免疫組織化学的染色法ならびにin situ hybridization法を用いてL-type Cav1 channelsの局在を検討する。 以上、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を学会発表および学術論文によって報告する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、当初予定していた研究進度が遅くなっていることおよび抗体、試薬、遺伝子解析関係の消耗品が当初の予定額よりも低価格にて購入が可能となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画に大きな変更はないが、次年度使用額を平成29年度請求額と合わせてウエスタンブロット法に使用するゲルおよび分子量マーカーの消耗品費用として使用する。
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