2016 Fiscal Year Research-status Report
汚染恐怖の病態理解に向けた嫌悪的な触質感の感性的質感認知研究
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15K21543
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
岩佐 和典 就実大学, 教育学部, 准教授 (00610031)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 視覚的触質感 / 心理物理 / 嫌悪 / 行動免疫システム / 汚染恐怖 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度には,視覚入力された物体表面の画像について,濡れ感の質感評定を求め,その尺度値を画像統計量によって回帰する,心理物理学的実験を実施した。これは,嫌悪感を惹起する嫌悪的な触質感の光学的基盤を明らかにし,行動免疫システムの検出機構について検討するためであった。 拡散光と自己発光のパラメータを定量的に操作した3D画像を呈示刺激とした一連の実験を行った結果,濡れ感の尺度値は,拡散光によって高精度に予測できることが示された。これは,照明の条件によって生じる物体表面の素材と光沢領域のコントラストが,濡れ感の視覚的検出に利用されていることを示している。この実験では,物体表面の形状と,物体そのものの概念を統制するために,同一の3Dモデルを用いて刺激作成を行ったが,その問題点として,そもそも濡れ感の感覚量が小さいことを挙げることができた。 上記の問題点を踏まえ,次いで2D画像を刺激とした実験を行った(n = 15)。この実験では,まず小麦粉と着色用のココアパウダーを一定比率で投入した混合物に,一定量の水を順次加えて材料を混成し,それに一定条件の照明を当てたうえで撮影した2D画像群を刺激に用いた。これは,刺激となる材料の水分含有比率を定量的に操作するための撮影方法であった。これを視覚呈示し,濡れ感の強さを基準とした順位付けを求める実験を行った結果,順位付けから得られた各画像の尺度値は,材料の水分含有比率と線形近似していた。被験者がどういった光学的情報をもとに,こうした正確な判定を行うことができたのかを明らかにするために,画像統計量による回帰分析を行ったところ,画像に含まれる輝度領域の個数が最も有力な予測変数であることが示された。 上記の結果は嫌悪的な触質感の光学的基盤となる画像統計量を明らかにしたものであり,平性29年度計画の土台となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画から若干の変更はあったものの,刺激作成の手続きを確立し,さらに,既にそれを用いた汚染リスク判定の実験も開始している。それらの成果は複数の学会にて発表しており,成果の公表についても順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度においては,過年度の知見を用いた実験を順次行うことで,当初の研究目的を達成することが可能であると見込まれる。それを可能とするために,実験の実施を担う人員を確保するなど,様々な方策を実行している。加えて,論文執筆も並行して進めることにより,さらに広範囲に研究成果を発信する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は33,634円であった。これは人件費や謝金をある程度の余裕を持って確保していたことによる残額であり,年度末に無理やり使用するよりも,次年度に有効活用することが望ましいと考えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度残額はさほど大きい金額ではなく,研究実施上の人件費や消耗品費,もしくは旅費を執行するなかで,有効に活用していく。
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Research Products
(3 results)